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フェルディナンドとロビン

「こんな仕打ちが許されるのか?いや許されないだろう!」


 涙目のエミリオを他所に、フェルディナンドはロビンに話しかける。


「やあ、私はフェルディナンド・ロッシ・ルイジ・カパローニだよ」

「こんにちは。ぼくはロビン・ジェイコブ・リチャードソン」

「よろしくロビン。今日から君はこの家のこどもになるんだよ」


 フェルディナンドの言葉にロビンは戸惑いの表情を浮かべる。


「どういうこと?…ぼくはもう、お家に帰れないの?パパとママとキャロルは?」


 ロビンはその大きな空色の瞳に涙を溜めて訴えかける。


(そうか、確かこの子は異世界から無理やり連れて来られたのだったな…)


 フェルディナンドはロビンの様子を見て、「ふむ」と少し考えるとやり方を変える事にした。


「君は大きくなったら騎士になりたいんだってね?」


 突然の質問にロビンはコクンと首を縦に振る。


「実は騎士になるには剣を教えてくれる人のお家に入らなければならないんだ。だが、君が今いるのはヴァレリア様のお家だろう?それだと剣を教えてもらえない。ああ、大変だ!」


 ロビンはハッ!とした表情になり、ウンウン!と何度も頷く。


「実は私は昔騎士だったことがあるんだ。それで、君に剣を教えようと思うんだけどどうかな?」


 剣を教えるというフェルディナンドの言葉にロビンは目を輝かせて、首を何度も縦に振った。


「ほんとに?やったー!」


 大喜びの様子のロビンにフェルディナンドは顔を綻ばせると、そっとその頭を撫でる。


「よし、では私は今日から君の剣のお父様になるよ。だから君も剣を教わっている間は()()()()()と同じだ。()()()()()の間は“ロビン・ファリナ・ジェイコブ・カパローニ”ってお名前にしてもらうけどいいかな?」


 理解しているのかしていないのか、ロビンは目を輝かせたまま「いいよ!」と頷いた。


「あと、“剣のお父様”だと長いから短くして“お父様”と呼んでくれるかな?」

「わかった!お父様!」


 ニッコリと首を傾げるロビンに、フェルディナンドもレオナルドも思わず頬が緩む。


「よし、じゃあこの邸にいる時に君が使う部屋に案内するよ。ついておいで」

「はい!お父様!」


 ロビンはすぐにフェルディナンドに打ち解けた様で、元気よく返事をすると手を繋いで応接室から出て行った。


「フェルは子供の扱いが上手いわね。意外だわー」


 応接室の続き部屋から金の巻き毛の美少女が入ってくる。


「伊達に三人の父親はしておりませんよ」

「ふーん。神々の最高傑作も邸に帰れば()()()()()って訳ね」


 ストンとレオナルドの向かいのソファに腰を掛け、脚を組む。


「寂しくなりますね。ヴァレリア様」


 レオナルドの言葉にチラッと視線を向けると、フッと笑う。


「むしろ静かになってせいせいするわよ」

「今回、空間転移で一緒に来れば良かったのでは?」

「これからこっちで暮らしてくのに、あの子馬車に乗ったこともないからね。経験させないと。まあ、初めての馬車が王家の馬車じゃあ贅沢すぎだけど?」

「それは言えてますね」


 給仕のメイドが運んできた新しいお茶に口をつけ、ヒョイと焼き菓子を口に放り込む。


「あの子、聡い子だから、たぶんもう帰れないことはわかってると思うわ。周りの大人たちの反応とかでね」

「…そうですか」

「頭ではわかってても、受け入れるにはもう少し時間がかかると思う。ゆっくり見守ってあげてちょうだい」

「わかりました」


 ジッと見つめてくるレオナルドの視線に気づき、ヴァレリアは「なによ?」と声をかける。


「随分入れ込んでますね。ロビンに」


 その言葉にヴァレリアは「ああ」と視線を窓の方に向ける。


「あたしには同じくらいの弟がいたのよ。元の世界に。金の髪に、瞳の色は少し薄いけど、似ててさ。だから、なーんか放っておけなくて。弟が大きくなるのは見届けられなかったしねー」


 ヴァレリアもかつて異世界から強制的に連れて来られた過去がある。元の世界に残してきた弟とロビンをいつからか重ねていたのだ。その成長を見守れなかった歳の離れた弟の代わりに、今度こそしっかりと育っていく姿を見届けたいと思っていた。


「ま、とにかくロビンの事は頼んだわよ。ちょいちょい様子見に来るから」

「かしこまりました」

「ところで、そこの生きる屍はなんでそんな事になってんの?面白い事するなら呼んでよ」


 ヴァレリアは皆に忘れ去られた哀れな第一王子を指差す。

 急に話を振られたエミリオは「はっ!そうだ!」と何かを思い付いたのか、ガバッと起き上がるとヴァレリアの手をガシッと握る。


「空間転移ですよ!ヴァレリア様!ミリアムの所へ私を送って下さいませんか!?」


 握ってきた手をバチンとはたくと、ヴァレリアはニヤリと嫣然と微笑む。


「愛とは障害を乗り越えてこそでしょ。楽しようとすんじゃないわよ」


「じゃーね」と言うと、ヴァレリアは瑠璃色の魔法陣に包まれて姿を消した。

 後には再び生きた屍となったエミリオが残された。


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