表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
42/86

小さな手紙

短くてすみません!

「城に戻ったらさっそく陛下に報告して、明日にはカパローニ侯に君との婚約を打診するよ」

「は、はい…」


 帰りの馬車の中で微笑みを浮かべながらそう言ったエミリオは、当然のようにミリアムの隣に座り、その細い腰に手を回している。

 想いが通じ合ったとは言え、自らの気持ちを自覚したばかりのミリアムは近い距離感に顔を赤らめながらドギマギするばかりだった。


「それから、今度街に出かけてみないか?」

「え?街にですか?」

「ぜひ連れて行きたい所があるんだ」


 にっこりと笑みを向けるエミリオにミリアムも微笑むと、こくこくと頷いた。その姿に嬉しさを抑えられなくなったエミリオはミリアムの額にそっと口づけを落とし、空いている片方の手でミリアムを大切に包み込んだ。


「もうカパローニ邸に着いてしまうね。残念だ」

「お送りいただきまして、ありがとうございます」

「君に好かれたくてしていることだよ。気にしないで」

「まあ。…もう充分お慕いしていますよ」


 そう言って頬を赤く染めたミリアムに、エミリオは口づけをしようと屈んだ。


 その時、馬車が停車し、扉が乱暴に開け放たれた。

 そしてミリアムとエミリオの顔の間にサッと手が入り込み、勢い余ったエミリオが止まれずにその手に突っ込んだ。


「痛っ!」


 顔面を乱入者の手にぶつけたエミリオが鼻を擦りながら見上げると、眩い金の髪に切れ長の紫水晶の瞳がこちらを睨んでいる。


「婚姻前に過剰な接触は控えていただこうか。と言うか婚約すらしていないはずだが。なぁ?第一王子殿下」


 美貌の側近は愛する末妹を抱き上げると馬車から降りていった。


「ミリアム嬢!()()の件は連絡する!」


 そう言って手を振るエミリオに、ミリアムも微笑み小さく手を振った。



 ◇



 カパローニ家の遠縁にあたる伯爵家の茶会から帰宅したアレッシアは、自室で自宅用のシンプルなドレスに着替え、侍女お茶を持ってくるように言い付けると、窓辺に置いてあるお気に入りの椅子に座る。


「ふぅ、お茶会も久しぶりだと疲れますのね。早く元のペースに戻さなくては…あら?」


 窓に何か挟まっていることに気付き、そっと手に取る。

 小さな封筒に入れられたそれは、アレッシアへの手紙だった。


 ――――――


 無理しないで

 笑顔の君はとても素敵だけど

 笑顔じゃなくても君は君だ


 G


 ――――――


「…G?」


 流れるような美しい文字で綴られたとても短い手紙だった。差出人は“G”とだけ書かれていた。

 いつ挟んでいったのだろうか。朝、ここで一息ついた時にはなかったその手紙をどうしたものかと戸惑っていると、侍女がお茶を運んで戻ってきた。


「アレッシアお嬢様、お茶をお持ちしました」

「ありがとう。後は自分でやるから、下がってちょうだい」


 侍女を下げると、再びその手紙を開き、目を通す。


「G…ジル…?まさかね。こんなところに来るはずないわよね」


 数週間前、自分を誘拐した男を思い出す。まさかこの短い手紙を送るために白昼堂々とカパローニ家に乗り込んでくるだろうか?いや、そんなはずはないと思いつつも、アレッシアはその小さな手紙を引き出しの中にしまった。


ブックマーク&評価ありがとうございます!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ