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閑話〜ミリアムとエミリオの往復書簡〜

 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


 ミリアム嬢へ


 今日のベアトリーチェ様とのお茶会はどうだったかな?

 実を言うとお茶会にいつミリアム嬢が呼ばれるのか、ずっと待っていたんだ。

 君の優しい兄上はなかなか私と君が話すことを許してくれないからね。ベアトリーチェ様の邸から送る事を口実に、馬車の中で君と話が出来たら嬉しく思う。

 せっかく知り合えたのだから、もっと君の事を知れたらと思っている。なにせ私と君は“同志”だからね!

 君の好きなものは何かな?好きな花や、好きなお菓子、何でもいいから教えてほしい。



 君の同志

 エミリオ


 追伸

 ちなみに私は3番街にある“プロドッティ・ダ・フォルノ”のビスコッティが好きだ(たまに1人で城を抜け出して買いに行っている。レオには秘密にしてくれ)



 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


 エミリオ・ヴィットリオ・ベゲット・アーヴィリエバレイ第一王子殿下


 本日は邸まで馬車でお送りいただき、ありがとうございました。

 僅かな時間ですが、エミリオ様と楽しいひと時を過ごせた事を光栄に思います。


 “プロドッティ・ダ・フォルノ”はわたくしもよく利用しております。

 と言っても侍女に買いに行ってもらっているので、エミリオ様がお一人で買いに行かれると伺い、大変驚いております。(お兄様もきっと驚かれると思いますわ)

 いつもアマレッティやクロスタータを楽しんでおりますが、次の機会にはビスコッティを購入してみます。


 好きな花は、エリカやミモザの様な小さな花をつけるものでしょうか。1輪で華やかになる大きな花よりも、小さく可憐な花が沢山集まって華やかになるものの方が好きです。


 本日、エミリオ様に邸までお送りいただいた時間は、本当に幸せでございました。ですが、毎回送っていただくのは畏れ多い事でございます。

 もしも、次の機会があるようでしたら邸から迎えを呼びます。お忙しいでしょうから、ご同乗頂かなくても大丈夫です。



 ミリアム・ファリナ・カパローニ



 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


 ミリアム嬢へ


 邸への送迎は遠慮しないで欲しい。

 いや、これは私の我が儘だと思ってもらっていい。

 君を邸まで送っていく時間が、執務に追われ、忙しい時間を過ごす私にとって唯一の癒やしの時間と言っても過言ではないのだから。

 私を助けると思ってこれからも是非送らせては貰えないだろうか?


 それと、手紙の宛名とはわかっているが、君に“殿下”と敬称で呼ばれるのは寂しい。

 いつでも“エミリオ”と名前で呼んでもらえないだろうか?

 お願いばかりになってしまったね!君からも何か“お願い”があれば何でも言ってほしい!


 君の好きだと言う“プロドッティ・ダ・フォルノ”のアマレッティを食べてみたよ。

 ほろ苦いアーモンドの風味がクセになるね!

 新しい発見が出来たことをとても嬉しく思うよ!


 今日は君の好きだと言っていた“小さくて可憐な花”を探して、花束にしてみたよ。喜んでもらえると嬉しい。



 アマレッティ派に乗り換えた

 エミリオ



 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


 エミリオ様


 とても素敵なカンパニュラの花束をありがとうございました。

 釣鐘型の小さなお花が可愛らしくて、とても気に入ってしまいました。

 私室の窓辺に飾って、眺めてはエミリオ様との会話が浮かび、心が救われる思いです。


 送迎の馬車の件ですが、エミリオ様のお気持ちは承知致しました。

 お忙しい日々の中のせめてもの慰めとなるならば、謹んでお受けしたいと存じます。

 その旨、家の者にも伝えておきます。


 アマレッティ派に乗り換えるのですね。思わず笑ってしまいました。不敬をお許しくださいませ。


 ビスコッティはとても硬いお菓子なのですね。エスプレッソに浸けると良いとお店の方から伺ったのですが、恥ずかしながら不得手でございまして、こっそりミルクに浸けていただきました。

 焼き菓子を飲み物に浸けて食べるなんて初めてでしたので、とてもドキドキいたしました。

 いつかわたくしも実際にお店に行ってみたいです。


 ミリアム・ファリナ・カパローニ



 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


 手元にあるエミリオからの手紙を読み返し、ミリアムは窓辺に飾ったカンパニュラの花を眺める。

 開け放たれた窓からは温かな初夏の陽が射し込み、時折届く爽やかな風が花弁を揺らす。

 薄い紫色の小さな釣鐘が揺れるたびに思い出す。エミリオの言葉を、馬車の中で向かい合いながら見る微笑みを、柔らかな前髪から覗くこちらを見つめる眼差しを。


 ミリアムはエミリオと手紙をやり取りする様になり、少しずつ打ち解けてきた。

 自国の第一王子ということもあって、最初こそ堅くなっていたが、あまり身分を笠に着ない、穏やかなエミリオの態度にだいぶ絆された形だ。


「本当に可愛らしいお花だわ。大好きになりそう」


 ミリアムは引き出しから便箋を出し、ペンを取る。

 今日届いたエミリオからの手紙にさっそく返事を書く。


「エミリオ様は本当にお優しいお方だわ。わたくしなんかにもこんなに良くしてくださるのだもの。将来お妃となられるお方はきっととてもお幸せでしょうね」


 手紙を書きながらエミリオへと想いを馳せる。いつか誰かと愛を語らうのだろうか。それはきっと近い未来に違いない。

 いつまでこうして手紙をやり取り出来るのだろうか。

 それを思うと胸の辺りがモヤモヤとする。

 この気持ちが何なのかはまだわからない。


 ミリアムがエミリオへの気持ちに名前を付けるのはまだもう少し先の話だ。

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