自覚
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◇
「ハックション!」
「おい、大丈夫か?この忙しい時に風邪などひくなよ」
クシャミをしたエミリオにレオナルドは冷たく言い放つ。
「いや、誰か噂でもしてるのか?と言うか、お前最近私の扱いがどんどん雑になっていないか?一応王子なんだが」
「敬っておりますとも、エミリオ王子殿下。これとこれとこの書類の束にはサイン、この書簡類は目を通して返信を、それから来月の救国祭での祝辞の依頼が来ておりますので、とっとと取り掛かるようお願い申し上げます」
「ぐぬぬ」
優秀な側近は先に目を通して仕分けをした仕事を次々に渡していく。
そうして執務机に積み上げられていく書類の束をパラパラと捲りながらエミリオは溜息を漏らす。
「…ミリアム嬢は息災か?」
最近やたらと末の妹に構ってくる友人から尋ねられ、レオナルドは片眉を上げる。
「先日も馬車で送っていただいたと記憶しているが?」
「いや、その、その時に渡した焼き菓子は気に入ってもらえただろうか?」
エミリオはバツが悪そうに目を逸らす。
「確認しておきたいんだが、お前は一体ミリィをどうしたいんだ?ベアトリーチェ様の邸から毎回態々馬車に同乗して送ってきて、そのたびにちょっとした贈り物や手紙を渡し、毎日様子を聞いてくるかと思えば、特に婚約を申し込んでくる訳でもない。はっきり言って家の者は皆困惑しているぞ」
ここ最近のミリアムに対するエミリオの行動は、ただの友人や友人の妹といった関係の者にするものとしては行き過ぎている。まるで婚約者に対するそれだ。
そのつもりがないのは当の本人たちだけで、周囲は婚約も秒読みか、公表していないだけで内定しているのでは?などと、憶測を呼んでいる。
「第二王子派のやつらは気が気でないようだぞ。過激な行動に出てくる可能性も否定できない。くれぐれもミリィを危険にさらしてくれるなよ」
「わかっている」
(ミリアム嬢と婚約か…)
エミリオはミリアムを思い出してみる。隣でお茶を飲む際の伏せた瞳、可愛らしい声、それでいて芯のある性格、エスコートした時に握った小さく柔らかな手、馬車の中で時折見せてくれるようになった可憐な花のような笑顔。
途端に胸が熱くなり、キュッとするようなフワフワするような気分になる。
(悪くない…むしろ良い、いや彼女しか考えられない)
「レオ」
「なんだ?」
美貌の側近を真剣な眼差しで見つめる。
「義兄上と呼ぶようになっても「断る」」
言い終わらないうちに断られ、エミリオはこの小舅を攻略しない事にはどうにもならないと、ミリアムへの気持ちを自覚した早々に前途遼遠も自覚したのであった。
ドンドンドン!
勢いよく扉がノックされ、カパローニ家の侍従が飛び込んで来る。
「レオナルド様!」
「どうした?」
侍従は慌てた様子でレオナルドに耳打ちをする。
「なに!?アレッシアが拐われた!?」
「!なんだと!?」
突然の報告にレオナルドとエミリオは状況把握に奔走し始める。




