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同志

「「ひっ!」」


「…その手を離せ」


 2人が慌てて手を離すと、ものすごい速さでミリアムをエミリオから引き離し、懐に入れていた手巾でミリアムの手をゴシゴシと拭う。


「お、お兄様、痛いです!汚れてなどいませんから、お止めくださいまし」

「いや、汚れている!ちょっと目を離した隙になんて事だ!」

「おい!ちょっと酷くないか!?一応私は王子だぞ!?」

「うるさい!よくも俺のミリィを汚したな!」

「お兄様!さすがに不敬がすぎますわ!」


 ベアトリーチェが薬を完成させて戻ってくると、3人が何やら揉めている。

 面白そうだと思い立ち、水晶を通してヴァレリアとエレオノーラにも見せることにした。


「お兄様!殿下とわたくしは言わば同志なのです!たった今お話をさせて頂き、わたくし深く感銘いたしましたわ!」

「カパローニ嬢は得難き同志なんだ!ああ、そうだ!ミリアムと呼んでも良いだろうか?私の事もぜひ名前で呼んでほしい」

「ええ!喜んで!ですが、お名前でお呼びするのは恐れ多いです」

「呼んでくれ!同志ではないか!」

「…で、ではエミリオ様…」

「ありがとう!ミリアム!」


 レオナルドを無視して再び話し始める2人に怒りが最高潮に達したレオナルドは、ついにミリアムを小脇に抱えた。


「ミリィはもう邸に帰す!エミルは薬を飲んだら侍従でも呼んで執務室へ戻れ!」


 そう言うやいなやベアトリーチェの邸を飛び出していった。


「ねぇ、見たぁ?青春よねぇ」

『ブフフッ!面白いことになってんじゃないの〜』

『もう少し滞在していれば良かったな』


 呆然と扉を眺めるエミリオをよそに、魔女たちが話し始める。


『あの兄貴がいたんじゃこの先ミリィも苦労しそうねー』

『王子もやっと興味を引かれる相手に巡り会えたのに、前途多難だな』

「やぁねぇ!それが愛を燃え上がらせるんじゃないのぉ」

「いや、ミリアムには同志と言う以上の感情は特にないです」


 エミリオは勝手に盛り上がり始めた魔女たちの話を慌てて否定する。


『えー本当にー?つまんないわね』

『まあ、また茶会で聞かせてくれ』

「そうねぇ。またミリィも呼びましょうか。とっても楽しかったし」

『いいわね!あいつ見てて飽きないから気に入ったわ!』

「うふふ。私もよ。それじゃあ2人ともまたねぇ」


 ベアトリーチェは魔法を解いた水晶を棚に戻すと、頼まれていた薬と水差しをテーブルに置く。


「はい、お薬どうぞ」

「ありがとうございます。ところで…」

「なぁに?」

「彼女…、ミリアム嬢を茶会に呼ぶときはぜひ知らせてもらえませんか?」


 キョトンとした表情を浮かべるベアトリーチェにエミリオは慌てて言い繕う。


「いや、その、そうだ!帰りは私の馬車で送ろうかと思ってですね!そう帰りの馬車です。そうです」


 何やら挙動不審になったエミリオを見て、ベアトリーチェは「ふぅん?」と含み笑いを浮かべる。


「そうねぇ、帰り道は心配だものねぇ。わかったわぁ」


 ニッコリと華のような笑みと共に了承すると、エミリオはホッとしたような安堵の表情を浮かべ、退室して行った。


「帰り道なんて、私の魔法で一瞬なのにねぇ。無自覚ちゃんかしら?うふふ」


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