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第2節:聖母マリアは生きていた


 子ども会による過激な少女A批判は世間からもやり過ぎではないかと反感を買っていたが、ドラマの放送により少女Aに対する世間の注目度は爆発的に上がった。それにより日本マリア教会の信者の増加や少女Aを持ち上げる意見が多く見られた。


 しかし、11月に入り少女Aの出産予定日が近づいたが彼女が産気づくことはなかった。報道によると、母体も胎児も健康であるが、不明な理由により陣痛が来ないのだという。


 これにより少女Aの宿す神の子とされる胎児はイエスキリストと同じく12月25日に生まれてくるのではないかとの憶測が生まれる。それと同時に、『まだ生まれないなんて、やはり妊娠自体が虚構だったのではないか』という意見が増えてきた。少女Aをめぐる論争は真っ向から対立する擁護派と反対派、それぞれが過激度を増幅させた。




 ◯◯◯




【悲報】少女Aさん、「嘘なんてつかない。批判が辛い」と声明を出す


6:2019/011/23(土) 03:55:36.61 ID:/8zqKuAao

ここまで来るとスゲーよな、親父にレ◯プされた頭のおかしい中学生に政府まで踊らされてんだから



7:2019/11/23(土) 03:55:55.61 ID:HaShlHJw0

この親にしてこの子ありって感じやな



8:2019/11/23(土) 03:56:35.96 ID:30qjub4J0

嘘言わないと死んじゃう病気なのかな?



9:2019/11/23(土) 03:56:41.49 ID:rgoVl8Bnp

こういうやつって何がしたいん?



13:2019/11/23(土) 03:58:04.88 ID:1c/HUYAeq

>>9

そら自己顕示欲やら承認欲求やろ



10:2019/11/23(土) 03:57:44.60 ID:Cdl2dyhZ0

でも医師団が処女って認めたんやろ

どれが本当なんや



11:2019/11/23(土) 03:57:50.58 ID:rgoVl8Cop

最初っからクリスマスに生みますって言っとけよ、もっと設定練ろや



12:2019/11/23(土) 03:57:57.71 ID:7vlXiyu30

フェミどもが必死に擁護してて大草原wwwwwww



14:2019/11/23(土) 03:58:53.99 ID:Y/bArgkgv

ここまで上手くやれるやつも本当におるんやな



15:2019/11/23(土) 03:58:57.72 ID:Ij1MVjPa0

女さんお得意の被害者面やん



16:2019/11/23(土) 03:58:59.21 ID:FTSqZymJ0

何を根拠にAちゃんが嘘ついてるってわかんだよふざけんな



17:2019/11/23(土) 03:59:06.14 ID:Otei+p8q0

>>16

信者乙




「はあ……」


 マウスのクリック音やらキーボードを叩く音やらがそこら中から響くパソコン室。

 盛大なため息をついた私に、隣の席の虹子(にじこ)が分かりやすく眉をしかめる。


「どうしたのよ、いつもパッパラパーな七星(ななせ)らしくないじゃない」


「パッパラパーで悪うござんしたね」


 声をひそめて言い返すと、「コーヒー買いに行くから付き合ってよ」とさっさとマフラーを巻き始めるマイフレンド。


 きりりとした印象を与える太めの眉は寸分の狂いもなく整えられていて、顎のラインで切りそろえた短い黒髪と相まってまさにできる女の風貌。それに加えて真っ赤な口紅はハキハキなんでも喋る口元を際立たせている。


 どんな系統で行くか迷走を続け、結局無難にゆるふわ系に落ち着いている私とはちょっとタイプが違う。


 虹子は私と同じ青鳥先生のゼミ同期なのだけれど、つい最近までフランスに1年間留学していたので学年をダブってまだ3年生だ。


 つまり卒論を書かなくていい!羨ましい!その代わり、就活の真っ只中らしいけどね。


 虹子ならもうできる女の空気感がムンムンに漂ってるもん、フランス語も話せるなら余裕でしょ。


 ちなみに今日は授業レポートがあるとかで、一緒にパソコン室に缶詰をしてくれている。


「それで、どうしたわけ?」


 日も落ちかけている構内で、虹子が切れ長の瞳に私を映す。


 そう、こやつのいいところは超絶サバサバ女子かと思いきやものすごい気遣い家でとりわけ私の心の機微(きび)を読み取ってくれるところなのだ。


 タイプが違うのによくつるんでいるのにはこういう背景がある。

 私は地面に落ちている臭い銀杏(ぎんなん)を踏まないようにしながらまた嘆息。


「少女Aちゃんの件で卒論書いてるって言ったじゃん?」


「言ってたね。面白そうだから書き終わったら見せてよ」


「いぇーい、嬉しいなあ見せてあげちゃう。んで、世の中のAちゃんをめぐる動きを追うためにSNSやらネット掲示板やらを周回してるんだけど」


 吐き出す息が白い。暖かいパソコン室から下界に出たのでめちゃ寒いけど、ほとんど換気されずに空気が(よど)んでいた場所からの解放感は心地良い。


「Aちゃんを嘘つき呼ばわりしてたり、不必要に叩く人が一定数いるの。しかもその人たちが、まるで自分たちがマジョリティ(多数派)であるように振る舞ってる」


「自称、|サイレントマジョリティ《物言わぬ多数派》なわけね」


「そう!新聞社のサンプル調査じゃAちゃんの処女懐胎を信じる人が半数以上なのに、見ていてやるせなくなるし、Aちゃんと手紙のやり取りした身としちゃ、あんな普通の女子中学生をよってたかっていじめるなんて!って思うわけ」


 思わず一気にまくし立ててしまった。

 虹子が真剣に聞いてくれるもんだから、つい。

 私がセリフを止めると、虹子は知的な眼差しを藍色の空に向ける。


「それはあれだね、SNSのサイロ化だ」


「サイロカ……?」


「ちょ、あんた青鳥(あおとり)先生の授業で習ったやつよ!2年の時とかに!」


「2年経ったら忘れちゃう〜。せんせー教えて」


「んまー呆れた娘だこと」


 肩をすくめてから、優しいお友達は解説してくれた。


「SNSを始めたり、インターネットが普及して知りたいことがなんでも調べられるようになったりして、あんたどう思った?」


「何でも知ることができて、便利な世の中だなって……んー、世界が広がったような感じ?」


 相変わらず虹子は話が上手い。キャッチーな疑問の投げかけから始めてくる。


 求めている解答ができたか分からないけど、彼女は満足そうに微笑んだ。


「そ、とにかくインターネット、SNSを通して、いろんな人と交流できるしなんでも知ることができる。それでみんな、『自分の世界は広がった。多くの人の意見を踏まえた上で自分は思想を作り上げている』と、思うわけ」


「ふむ、そうだね」


 私も中高大の友達用のアカウントと別に、趣味の観劇用アカウントを持ってる。そこで現実世界では周りにいない観劇仲間と交流ができるし、自分では気づけなかった物販情報とかを得られる。


 舞台の意味深なシーンの解釈とか、私では考えが及ばなかったフォロワーさんのすごい考察を見てると自分も舞台の内容をきちんと理解した気になれるし。


「その、開けた世界で触れた思想、考え方、倫理観。これが世間の意見だって思ってない?そのすごいフォロワーとやらの考察が正解って言い切れる?」


「公式発表でもなんでもないから……言い切れない」


「でしょ、冷静に考えりゃそうなるのよ。SNSとかインターネット掲示板って開けた世界かと思いきや、似たような趣味嗜好(しゅみしこう)、年代、思想の人が集まるようになってるの。仲の悪い、思想の合わない相手とは繋がらない。七星のアカウントもそうでしょ?」


「確かにそう!」


 中高大、私と同じ学び舎にいて似たような教育を受けた同じ世代のメインアカウントのフォロワーたち。


 私と同じ地方に住んでいて、観劇の趣味を持って、私が好ましいと思う解釈の仕方をしてくれるフォロワーたち。


 たまに合わないなあと感じる人もいるけど、SNSで繋がっているのは、、私が普段から触れている思想や生活は私自身と共通項がある人ばかりだ。


「広い世界だと思ってるネット上で触れるものは、実はあんたの思想に似てるものの集合体なの。それを、『多様な人々の思想に触れている』と思い込むことによってどんどん考え方は()り固まっていく。ま、観劇は平和な趣味だから解釈が(かたよ)ったところで問題ないけど、これがジェンダー論とか政治とか、デリケートなジャンルになると」


「自分は多数派で、自分の意見と世論は同じだと思い込んでいる偏った思想の人が大量生産されちゃうのか」


「そう、限られたコミュニティ内でどんどん考え方が孤立してくの。現代の聖母マリアの件、新聞社の調査で半数以上が信じると答えたのにネット上で嘘つき呼ばわりばかりなのは、このサイロ化が起きているからなんじゃない?あとは普通に、小さい女の子が注目されてて嫉妬してる人も大量にいるからだろうけど」


「うわあ勉強になったありがとう。サイロ化の話、卒論に入れようかな」


「あんたのそのパッパラパーなりに素直なところ、私好きよ」


「一言余計なんだよなあ」


 買ったコーヒーで暖を取りながら、私たちはパソコン室へ戻った。




 ◯◯◯




 12月24日。


 世間はクリスマスフェア。私はひとり卒論祭り。

 卒論提出まで残り2日なのにも関わらず、私は4名様に大ジョッキを運んでいる。


「お待たせいたしました、烏龍(ウーロン)ハイ4つでございます!」


 ちょっと良い居酒屋なので、普段なら注文した人の前にジョッキをきちんと静かに置いていくんだけど、今日はテーブルの端にドンっとジョッキを置いた。


「お姉さーん、生中5つね!」

「すみませんトイレってどこですか?」


「はーいかしこまりましたぁっ。お手洗いはこちら真っ直ぐ行っていただいて突き当たりを右にございまーす」


 ハンディに生ビールを打ち込みながらキッチンへ足を向けた。


 忘年会シーズンでお店は超満員。グラスがぶつかる音、陶器の皿がフォークで引っかかれる音、酔って大声になる人がたくさんいるせいで、レシーバーの音量を最大にしないと業務指示がよく聞こえないくらい。


 目の回るような忙しさだ。


「北山さん、さっきのお客様飲み放プランなしでハンディ打ってたよ」


 完成した料理を厨房から受け取っていると、黒いサロンを巻いた阿部先輩が空きジョッキを何個も抱えて戻ってきた。


「わあ、そうだ!すみません打ち直します」


「処理は俺の方でしておいたから大丈夫。今日は混んでて大変だよね」


 爽やかな笑顔を浮かべて重たい刺身盛りを持ち上げてまたホールへ出て行く。


 か、かっこいい〜!後輩のミスを叱るでもなくそっとフォローしてしかも(ねぎら)ってくれるなんて。好き〜。


 卒論が修羅場(しゅらば)なのに店長に土下座の勢いで頼まれたから嫌々入ったシフトだったけど、阿部先輩にお会いできたから今日の仕事プライスレス。


 浮き足立って仕事をしていたら早くも日付を超えていた。


 1時まで続く店の営業は店長と他の終電があるバイトに任せて、私は先輩と肩を並べて早上がりさせてもらう。


 ああっ、ド深夜とはいえクリスマスに先輩と2人でいるなんて、なんてハッピー!メリークリスマス私!


「卒論はどう?進んだ?」


 私を見下ろす目が優しい。ちょっとアンニュイに見えるその角度、いつもの2割増しイケメンです、素敵。


「あとはむすびと謝辞を書くだけですね。文字数的にはもう規定数超えてるんですけど」


「そっか、書き上がったらぜひ見せてよ」


「もちろんです!先輩はAちゃんに次ぐ協力者ですからっ」


「はは、役に立てたなら嬉しいよ。これで少しでもあの子に優しい世の中になればいいんだけど」


 憂鬱(ゆううつ)そうに先輩は呟いた。


「SNSですか」


「ああ。よせばいいんだけど、気になって調べてしまうんだよね。今日もこれとか……」


 携帯の画面を見せられる。



Go-chan

@gogocha1211

ここまでの世界を巻き込む騒動になったのだから #少女A に対して逮捕、 #犯罪 として立件できないのか? 証拠の情報が出ているのに、本人は #処女懐胎 したと言われてました。虚偽であり工作活動、犯罪ですよね!



乙音

@oto-otsu__

【#少女A 氏への疑問①】

・最初「11月に出産予定」と主張していたが、実際に11月になると一転「なぜか生まれない。出産は12月かも」と主張を変化。

・当初「自分は無宗教」と主張していたが、科学的にあり得ないスティグマが出たと言って一転「キリスト教に改宗した」と言い出す。



山野慎

@sincere-891

いつの間にか、少女Aさんの処女懐胎事件はでっち上げと言う事になってますね、少女Aさんが様々なメディアに取り上げられすぎたのかな。いつの間にか少女Aさんは嘘つき呼ばわり、難しいですね。



日の丸

@gifgif909

@nonnomkoさん

中国の操り人形の少女Aも同じ臭いしますよね笑



ゆう

@yunkoyuya

#少女A の隠れ家特定マダー?




「……ひどいですね」


「ごめんね、疲れてるのにこんなの見せちゃって」


 慌てて携帯を閉じる先輩。


 虹子から聞いたサイロ化を思い出した。

 Aちゃんを(かば)うような人も今の呟きの中にはいたけど、それ以外はみんなAちゃんが嘘つきと確信している。


 そんな報道も、公式発表も何もないのに。


「親戚から聞いたんだけど、その、少女Aがかなり精神的に参ってるらしくて」


 先輩は眉間を揉むようにして項垂(うなだ)れる。


「14歳で妊娠しただけでも大変なのに、世間から注目されて勝手に担ぎ上げられたり批判されたりしたら仕方ないですよ」


「そうだよね。嘘とか本当とか、真偽は差し置いて、彼女がキリスト教に改宗したのも気に入らない人が多いみたいだ」


「日本は宗教観があまりない国ですから、宗教というだけで敬遠される傾向がありますよね。アメリカなんて大統領が就任式で聖書に手を置いて宣誓するのが習わしなのに」


「なるほど。彼女を海外に行かせるのも一つの手なのかな」


「うーん、海外だってネットは発達してますし、批判的な人も多いかと思います。Aちゃんが無事明日に出産できればいいんですが」


「うん、俺も切に願ってるよ。……ここだけの話、出産の兆候が昨日あたりに現れたとか」


「えっ、本当ですか!」


 産んでしまえば、その後だって辛い思いはたくさんするだろうけど少なくとも想像妊娠説とか、妊娠自体を嘘と言っている人たちを黙らせることができる。


 特に今日、クリスマスに生まれれば胎児の神性も信じやすくなる。


「聞いてくれてありがとう、俺はこれで。卒論頑張ってな!」


 違う路線で帰る先輩に手を振り、私はなんとなくその後ろ姿を眺めていた。


 改札に入った先輩は何かに気づいたように携帯を取り出し、耳に当てる。そして不意に立ち止まった。


 どうしたんだろう?


 首を傾げつつも私が自分の路線へ歩み出そうとすると、


「北山さん!!!!」


 大声で呼び止められる。


「ちょっ……すみません」


 人にぶつかりながら焦った様子で先輩が改札を抜けて戻ってきた。顔面蒼白で、過呼吸のように息が荒い。


「大丈夫ですか?どうしたんですか」


 慌ててその場で気分悪そうにしている先輩に駆け寄って尋ねると、血色を失った薄い唇が震えながら呟いた。



「ゆ——、Aちゃんが、亡くなったって」





 ◯◯◯




 12月24日の午後23時頃、少女Aは家族と滞在する滋賀県のホテルの屋上から飛び降り、自ら命を絶った。

 血を流して倒れているのを他の宿泊客が見つけ、すぐ病院に搬送されたが、胎児と共に死亡が確認された。


 胎児のDNA判定をした結果、胎児の父親は騒動の間長く疑われていた少女Aの父ではない、海外男性の遺伝子であることが判明した。


 部屋に家族に当てた謝罪のメモはあったが遺書はなく、自死の理由は明らかになっていない。

 しかし、日頃から自身が世界中の注目を集めていること、理不尽な誹謗中傷を受けていること、ありもしない噂を立てられていることが苦痛であると両親に訴えていたという。


 かくして、現代の聖母マリア事件は、聖母マリアと呼ばれた14歳少女の自死により終結したのである。




 ◯◯◯




 暖房の効いたゼミ室に私の鼻をかむ音が響く。

 ぐずぐずと涙で曇った視界で、青鳥先生が黙って私が泣き止むのを待っていてくれる。


「ず、ずびまぜん……ずぐっ、泣きやみますからっ!」


「まだ提出でゼミ生たちが来るまで時間がありますから、焦らずとも大丈夫ですよ」


 箱ティッシュを私の方へ寄せてくれた。


「それにしても、まさか少女Aが自殺とは」


「あんな、あんなに普通の子だったのにいぃ。Aちゃんは普通の中学生で、普通に恋愛したり遊んだり勉強したり、そうなれるはずだったのに……っ」


 嗚咽(おえつ)が止まらず息が苦しい。


 昨日の夜散々涙を流して、泣き腫らした目で登校したのがついさっきのこと。

 深夜3時まで私の慟哭(どうこく)配信を聞いてくれていたのは虹子である。


 今日はAちゃんの自殺により、卒論の内容を変更するかどうか緊急の話し合いをしましょうと青鳥先生に呼び出された。


 顔を合わせた途端、「残念でした」なんて先生が言うから、また号泣してしまっている。


 10分ほど大泣きをしたら気が済んで、落ち着いてきた私に青鳥先生は穏やかに語りかけた。


「ざっと北山さんの卒論を確認しましたが、変更するのは最後の章だけで大丈夫そうです。辛い気持ちも分かりますが、何よりもあなたが優先すべきは卒論を提出し、学士を取得することですよ。感情に流されて書き終わらなかった、なんてことがないように」


「うう……はい」


 すぐにでも流れ出しそうな涙を唇を噛んで押し留める。冷たくも聞こえる先生のセリフの奥に、かすかな悲哀が(にじ)んだ気がして顔を上げた。

 知的な瞳は少しだけ潤んでいて、もしかすると先生も泣いているのかもしれない。

 そうだ、ちょうど先生も息子さんが中学生だったはず。


 私の2倍以上生きている先生は、こんなことをもっと経験して来たのだろうか。

 関わりの浅い関係の人も、家族も亡くなったかも。


 それを乗り越えて、先生は今『大人』として私の目の前にいるのだろうか。


「とにかく」


 青鳥先生の顔を見てまた泣きそうになっている私を制するためか、目の前のナイスミドル男性は咳払いをする。


「インタビューに答えてくれた少女Aさんのためにも、あなたがきちんと卒論を書いて提出すること。最後まで頑張ってください。応援していますよ」


 心の支えになる激励の言葉。

 私は力強く頷いた。




 ◯◯◯




 第5節:謝辞


 本論文を執筆するにあたって、青鳥剛教授には大変お世話になりました。テーマに迷っているところを突破口となるキーワードをいただきましたこと、心から感謝申し上げます。

 おかげで軸が定まり、最後まで以降ほとんど揺らがないまま本論文を書き上げることができました。


 そして、(こころよ)くインタビューを受けてくださった現代の聖母マリアこと少女Aさんにも感謝を。


 本論文の一番の意義は、取り上げたテーマの中心にいらっしゃった少女Aさんのインタビューを記述できたことにあると思っています。本当にありがとうございました。


 その若さで子どもを産むと決意した姿勢、果敢に批判意見を否定してみせた態度から、私の方が年上なのに多くを学ばせてもらいました。


 この場で最期まで戦った少女Aさんのご冥福をお祈りして、謝辞とさせていただきます。



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