鉄壁のブル・ガースト。
『ブルルルル!』
「ひぅっ!」
リゼルを真っ直ぐに見据える闘牛が蹄を鳴らし、ゆっくりと歩く。
次第に足の回転が速くなり、リゼル目掛けて角を突き出し突進。
リゼルの行動はもちろん迎え撃つ…訳では無く…
「――ぎゃぁあああ! 恐いぃぃいい!」
空に逃げる。
魔物の威圧感、殺意、闘志…
とても真正面から対峙出来るものでは無かった。
≪あれはブル・ガーストって魔物だ。落ち着いて対処すれば倒せる≫
恐怖に鼓動が速くなり、額からは汗が流れ…目から涙が溢れる。
ただただ恐い。
一般的には最弱のゴブリンから慣らしていくものだが、いきなり闘牛の魔物…ブル・ガーストは難易度が高かった。
「カイ!」
≪どうした!≫
「逃げよう!」
≪頑張れ!≫
リゼルがムスーッと口を尖らせ、イヤイヤ頭を振っている。
今は大人の姿なので、駄々を捏ねる姿が大人げなく見えた。
中身は普通の女子なのは解っているが、ここで逃げたら逃げ癖が付いてしまう。カイは心を鬼にしてリゼルを闘わせようと奮闘。
「ふぇぇえ…恐いよぉ…」
≪リゼル…空に居れば攻撃してこない。だから空から攻撃すれば大丈夫だ!≫
「……ほんと?」
≪あぁ、見てみろ。何もしてこないだろ?≫
リゼルが恐る恐る下を見ると、こちらを睨んで動かない闘牛が見えた。
遠距離攻撃を持たない様子。
リゼルの顔に少しの安堵が浮かんだ。
ふぅーっと深呼吸。
広げた右手を上に、左手を下にブレスの構え。
緋色の炎が発生。
凝縮し一気に解き放つ。
「……焼肉になれ…スカーレットブレス」
緋色のブレスが広範囲に放たれ、闘牛もろとも周囲を炎で包む。
周囲の木々に燃え移らないように炎を操作。
「……」
眼下に広がる炎の海。
生物は生き残る事が難しい環境。
周囲の景色が歪む高温地帯。
その中で…
闘牛は無傷で立っていた。
「……カイ…効かないんだけれど…」
≪あぁ…多分防御力を上げる竜星だな…≫
「……竜星って言うから竜人しか使えないんじゃないの?」
≪いや…力の塊だから、使おうと思えば誰でも使える。しかも魔物と相性が良い≫
「…先に言ってよ」
後書きに能力値等々の追加をしています。