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双子の流星  作者: はぎま
南へ
8/38

山越え。

 

≪リゼル…リゼル≫

「んぅ……魔物?」


≪いや、朝だぞ……よくこんな所で器用に寝られるな≫


 カイの声で目が覚めたリゼルは、木の枝に手足をだらんとしていた。

 思いの外野宿でぐっすり寝ていた事に少々驚く。いつもなら夜中に目が覚めてビクビクしながら夜明けを待つのだが、疲れていたのか朝日を浴びる時間まで寝ていた。


「疲れていたのかな」

≪そうかもな≫


 木から降り、んーっと伸びをしながら昨日の崖まで戻ってきた。

 崖の縁に立ち、崖下を覗き込んでみると川が流れている。

 水浴びをしたい気持ちになったが、流れが急なので諦め竜星を取り出した。


「【炎】【成長】竜星変身…スカーレットドラゴン!」


 リゼルが緋色の炎に包まれ、赤いドレスを来た大人の状態に変身。そういえばと、自分の身体を確認する事にした。


「私が成長すると、こんなナイスバデーになるの?」

≪竜星の力も入っているから、一概には言えない≫


「ナイスバデーになるの?」

≪確証は無い≫


「…ナイスバデーになるの?」

≪……あぁ、なるなる。ナイスバデーだ≫


 背中にまで届く綺麗な赤い髪。

 情熱的な赤い瞳。

 他者を魅了する豊満な身体。

 普段のリゼルとは真逆の存在だった。


 背中の翼を弄っていると、ふと思い付いたように翼に力を込める。

 ポンッ。翼が消え、人間と見た目が変わらなくなった。


「やった。翼が消えた。これで人の街に行っても大丈夫だね」

≪…そんな器用な事が出来るのに…普通の竜変身は出来ないのか?≫


「出来ないの。言われなくても解ってるもん」


 ムスッとしながら再び翼を出し、崖を飛び越える。

 身体の使い方はカイに叩き込まれているので、練習の必要が無いとリゼルは内心喜んでいる。


 百メートルを難なく飛び越え、向こうの場所へと着地。

 そのまま真っ直ぐ南の方角へ駆け足で進み、見上げる大きさの山を低空で飛びながら越えていく。



「っと、山頂に到着。竜星変身って楽だねぇ。コスト2なら身体の負担も少ないし」

≪慣れて来た証拠だな。ちゃんと自分の竜変身も練習しろよ≫


「解ってますぅー」


 山頂から下に広がる大地を眺める。

 小さな村が幾つか見え、大きな川が流れている。

 久しく景色を堪能する事が無かった分、しばらく染み入るように眺めていた。


≪…あぁ、やっぱり来たか≫

「どうしたの?」


 しばらく眺めていると、カイが何かに気付く。


≪広い場所に移動するぞ。魔物が来た≫

「えっ…魔物…」


 嫌そうな顔を隠しもせず、魔物という言葉に反応する。

 しかし待っていると山頂で魔物に遭遇してしまう。

 仕方なく近くにある闘いやすい広い場所へ。


 山の窪みになっており、木が少ない場所。

 ふかふかの地面が多少歩きにくいが、山頂よりはましだった。


 いつでも逃げられるように準備運動をしていると、リゼルでも感じられる程の気配が近付いて来た。


「カイ…怖い」

≪頑張ってくれ。アイツが竜星を持っている≫


 リゼルの鼓動が早くなる中、魔物と呼ばれるそれは現れた。


「あぁ……うぅ……」


 赤黒い体毛から浮き出るゴツゴツとした力強い筋肉。

 リゼルを見据える瞳は、殺意の塊。

 四本脚で大地に立つ姿は、剛胆、剛猛、剛勇。


 刺されば痛いでは済まない鋭い二本の角を持つ闘牛の姿。


「ぅぐぅ…ふぐぅ……きょわい…あっ噛んだ。恐い」

≪…余裕そうだな≫


 リゼルは魔物と闘った事が無い。


 それはもう…恐かった。



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