職業欄に賢者と書いたらクレジットカードの審査が通らなかった件
栗原悟、こう見えても賢者やってます。大賢者になる為に日々研鑽を怠りません。
今は故あって電話を掛けているのです。
「お電話ありがとう御座います。株式会社ABCお客様センター相田がお伺い致します。」
「あーもしもし、私は栗原と申します。そちらのクレジットカードに申し込んだのだが、どうも審査が通らなかったみたいでな。理由を教えて欲しいと思いましてお電話したのです。」
なるべく穏やかな口調で悟は伝えた。
「左様で御座いましたか。ただ、誠に申し訳御座いませんが審査につきましては詳細をお知らせさせては頂いておりませんので、今回は申し訳御座いませんがお断りさせて頂く形になったという事でご返答とさせて頂きます。では、失礼致します。」
『プーップーップー』
「取り付く島もないな。」
「お電話ありがとう御座います。株式会社DEFサービスセンターお客様係の近藤が承ります。」
「栗原悟と言うものだけど、審査通らなかった理由が知りたい。」
今までの事もあって悟はぶっきら棒になってしまった。
「栗原悟様ですね。成る程。こちら私では詳しい事が分かりませんので、少々お待ち頂ける様でしたら、上の者に確認して参りますが?」
「お願いします。」
「畏まりました、一旦失礼致します。」
保留の音楽が流れる。
「お待たせしました。私は係長の田中と申します。栗原様のカードの審査の件と伺いましが。」
「ええ、理由を教えて貰いたい。」
初めて役職が出てきた。
「単刀直入に申し上げますと、職業が引っかかりまして、お断りさせて頂く事になりました。」
「賢者ではダメですか。」
きっと哀愁が漂っているだろう。
「ええ、そうですね。賢者ともなりますと、異世界召喚されるリスクも高く、その期間も年単位なんていう事もザラです。中には戻らない方もいらっしゃいます。その様な職業ですと、中々信用審査を通過するのは難しいですね。」
「そうですか。ご丁寧にどうも。」
残念だが仕方ないと諦めようとした。
「差し出がましい様ですが、もしネットショッピングなどの決済で御入用でしたら、最近の銀行のキャッシュカードなどにデビット機能が付帯されている物なども御座います。DEFデビットですと弊社のクレジットカードが使える所では殆どでお使い頂けますよ。」
「賢者でも?」
「大丈夫です。」
銀行に向かう悟であった。