#2 初めての担当
ー脳神経外科病棟ー
「星川さん、おはよう」
「間宮師長、おはようございます」
「今日、内科病棟からここに患者様が転科してきます。その患者様の担当を星川さんにしてもらおうと思います。普段のあなたをみていて、もう大丈夫と判断しました。指導看護師の中川さんもそして私もついています。しっかり看護師として一人立ちしてごらん」
「はい。頑張ります」
こうして初めて患者様を受け持つことになった新人看護師の鞠花。
◇◆◇◆◇◆◇◆
内科病棟看護師に車椅子を押され一人の患者様が脳神経外科病棟に転科してきた。間宮看護師長が病室に案内して患者様に後程担当医と担当看護師が来ますのでそれまでベッド安静をしてもらうよう伝え病室をあとにして、内科病棟看護師と担当看護師との引き継ぎに付き添うためナースステーションに急ぐ。
内科病棟より脳神経外科への申し送りを行います。内科病棟看護師が担当看護師の星川と脳神経外科病棟の間宮看護師長に引き継ぎを始めた。
患者氏名 高村翔太さん男性 28歳
仕事中に意識消失にて救急車で搬送され当医院に来院。問診時、数日頭痛があったとのこと。そして腕の痺れの症状にて検査入院。
脳梗塞や脳出血の疑いで検査。入院している間にも症状がみるみる悪化。このことから脳腫瘍の疑いもあり、神経学的検査の結果、腫瘍があることが判明。引き続きMRI検査の結果、悪性の可能性が認められ、病理検査のための手術が行われた。検査の結果は悪性。内科病棟ではここまでです。後はこちらでよろしくお願いします。
こうして引き継ぎを終えた。主治医は藤ヶ谷医師が担当される。ナースステーションに藤ヶ谷医師がカルテを確認しに現れた。電子カルテを確認しながら声をかけた。
「高村翔太さんの担当ナースは?」
「はい私、星川鞠花が担当させていただきます」
「おっ、担当デビューかぁ。良かったね。遂に一人前だね」
「いえいえ、まだまだです。藤ヶ谷ドクター、よろしくお願いします」
「こちらこそ、よろしく! それじゃあ病室に行こうか」
「はい」
ナースステーションを出て、病室に向かう。
病室につき、藤ヶ谷ドクターがノックをして病室に入り高村様に声をかけた。
「高村さん、新しい病室はどうですか? 主治医をさせていただく藤ヶ谷です。こちらは担当看護師の星川です」
藤ヶ谷医師に紹介され一歩前へ出て自己紹介をする
「担当看護師の星川鞠花です。今日から高村さまの担当をさせて頂きます。宜しくお願い致します。何か気になることがあったら、遠慮なくナースコールをしてくださいね」
挨拶をすると高村様の表情を見て藤ヶ谷ドクターは声をかけた。
「星川君は実習生の頃から優秀でベテラン看護師にも引けを取らない実力があります。若くてもどうかご安心を」
「あ、いや、そういう事じゃなくて、彼女、知り合いにそっくりだったので驚いて…」
「えっ! そうなんですか? もしかして彼女さんですか?」
「こら! 余計なことを聞くんじゃない」さ
「失礼しました。こんなヤツですけど、宜しくお願いします」
「お願いします」
藤ヶ谷ドクターと頭を下げ病室を出た。
藤ヶ谷ドクターが私に看護記録にもカルテにも書かれていないことを告げた。
「星川さん、彼の余命はあと1年。本人に告知はまだしていない」
「そうですか」
高村様の治療や告知についてカンファレンスが行われることになっていた。