表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/43

渚の心と出落ち少女

今更ですが、主人公たちの苗字は「湊音」(みなと)です。

また、今回の話は基本渚視点で進んでいきます。


「はぁ……兄さんから逃げちゃったなあ」


兄一の部屋を出た渚は、トイレの個室で一人、鉛のようなため息をついた。


「なんであんなこと口走ったんだろう、僕」


女のときは血が繋がってない“かもしれない”というカードを切るつもりは、まだなかった。

いくら兄一の局部が映った写真が欲しいといえ、そのために兄一との関係性がギクシャクしてしまっては本末転倒だからだ。


加えて『なんちゃって』でお茶を濁したが、あの話の持って行き方はほとんど(・・・・)愛の告白……いや、告白そのものとして受け取られただろう。


もちろん最終目標は“そこ”だが、今はまだ時期尚早すぎる。


もっとじっくり時間をかけ、女体化できる弟として兄とスキンシップをとりつつ、少しずつ小悪魔じみてエッチな誘惑を増やしていき、兄に自分という女を意識させる。


そして兄が性別や血の繋がりで真剣に苦悩したところで、カードを切り告白して一気に背中を押すつもりだった。


「結局、僕は焦り過ぎたってことなんだろうなあ」


渚は今までの生き方故に、人付き合いにおいて自分から能動的に動くことを不得手としている。

加えて体はともかく、心は偽者……つまり本物の女ではない。

故に、男女間の恋の駆け引きで下手を打った。


「でも、さっき無理に話を終わらせなければ、兄さんは何て言うつもりだったんだろう?」

『俺は……お前のことを……』

その続きで『弟としか思えない』と言われるのが怖くて、逃げてしまった。

あるいは『一人の女として気になっている』と言われる可能性もあったかもしれないが、あくまで“可能性”でしかない。


「“未来“がどうなるかなんて分からないからね。あっちの世界(・・・・・・)の巫女様ですら、僕に関わる未来は見えなかったみたいだし……よし!」


やってしまったことを悔いても仕方がない。

先走ってしまったと言え、目が完全に潰えた訳ではない。


去り際の兄の様子を見た限りでは、向こうも当面はこの話題に触れてこないだろう。

ならばいま自分がすべきこと。それはいつも通りの渚として、兄一に接することに他ならないだろう。


「さしあたっては勝負の景品として、兄さんの亀さん写真を自分のものにしてもいいよね?」


自分の性別を変えるとは不思議なもので、男のときに兄一と接していても敬愛はすれど、キスやそれ以上等性的欲求を抱くことは無い。

しかし、女の体になっているときは普通に異性として見てしまい、体はもとより心までが男を……正しくは兄一を性の対象として見てしまうのだ。


「僕のちょっとエッチな写真はどうしようかな? できればオカズとして使ってほしいけど、今回のほとぼりが冷めるまでは性的なことは自粛した方がいい気もするし……」

「みぎゃああああああ!」


渚と兄一しかいないはずの湊音(みなと)家に、第三者の悲鳴が響いたのはそのときだった。


「そんなバカな! 僕と兄さんの城を守るために【気配察知】は常に発動しているのに、それに引っかからなかった!? 突然家の中に現れたって言うの?」


狼狽したものの、その体はあちらの世界で培った経験により、対応を考えるより先に反応してくれる。


渚は亜空間アイテムボックスに収納していた聖剣を確認しながら、悲鳴の方向――兄の部屋に足を向けてトイレを飛び出した。


「兄さん、女の子の声が聞こえてきたけど何があったの!?」


長い髪を振り乱して廊下を駆ける渚は、思わず叫んでしまったことに心の中で舌打ちしてしまう。

これでは奇襲ができず、相手を警戒させてしまうだけだ。


どうにも兄がからむと冷静でいられない自分に苛立つ反面、それだけ彼のことを想っていることに同時に気付いて頬が赤くなる。


「けどいまは兄さんの安否が重要だよね」


不審者の侵入を許してしまったが、気配察知に異常がなければ、兄一の部屋の中の反応は2つ。


大きい方は配置的にベッドに横になっており、侵入者と思わしき反応は入口の後ろ2メートルくらいの位置でうずくまっているようだ。


壁を蹴り壊して(・・・・・)横合い突入しようか、あるいは壁ごしに【眠りの魔法】を飛ばすか逡巡したのち、そのどちらでもなく、正面から堂々と突入する道を選択した。


下手に小細工を労して不審者を刺激し、兄にこれ以上の危害が及ぶことを防ぐためだ。


「兄さん、大丈……ぶ?」

「ママ、ごめんなさい!」


渚は部屋のドアを開けた状態で硬直してしまったが無理もない。

それほど、視覚に飛び込んできた情報には既視感がありすぎたからだ。


敬愛すべき兄の言葉を借りるなら、


部屋のドアを開けたら、見知らぬ女の子が全裸土下座をかましていたでござる。

その右側には、着ていたであろう服を丁寧に折り畳んで置かれた状態で。


書き連ねた文書を切りのいいところで区切ったら、前話は尺が長くなった分、今回は文章量が若干少なくなりましたがご容赦ください。


ファンタジーやバトル、SFモノにする予定はありません。

あくまでも設定上だけで基本コンセプトは今まで通り、ゆるくてお気楽なTSラブコメです。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ