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兄一コレクションと対戦ゲーム(後編その1)

そうして、互いの大切な画像データを賭けて渚と勝負することになったのはいいが。


「種目は何で競うつもりだ?」

「うーん、そうだね……」

「頭はもちろん体を使う勝負なら、たとえ女のままでもお前の圧勝だろうし、運の要素が大きい勝負は俺が少しだけだが有利だろ?」

「そうなんだよね。兄さん、運と性格だけはいいんだよね」


誰の性格がいいって?

コイツの黒水晶のように綺麗な目は実はガラス玉か? それとも何も入ってない節穴か? 海のリハクか?


「うーん」


種目選択で考え込んでる渚は、自分が何を口走ったか気づいてない様子だ。

おそらく常日頃から思ってる本心が無意識のうちにポロッと出たんだろう……って思わせたいんだろ? けど俺は騙されないからな。


勝負はもう始まっている。

渚のヤツは俺をほめ殺しにすることで、先制のジャブを放ったつもりなんだろう。


「どうしようかな~?」


スウェットのポケットからおもむろにポッキーの箱を取り出し、開封して口に咥える渚。


お前そんなモンまで持ち歩いてるのかよ?


「ん~」

「おい。何ポッキーをピコピコ動かしたままチラチラこっち見てんだよ? さっさと食っちまえよ」


やらないからな。

ポッキーゲームとか言い出したら即座に却下してやるからな。


「じゃあ……テレビゲームで勝負しようか?」


俺の無言の抗議を受け、妥協を見せた渚が仕方なしに口を開く。


「たしかにそれなら勝負になるか」


テレビゲームなら何度か対戦したことがあるが、成績はほぼ互角だ。


ことテレビゲームにおいて、渚は反応速度や状況判断が異常なほど早いが、キャラ操作が自身の処理速度についていけてない――早い話、キャラを思い通りに動かせてなかった。


つまるところ、基本スペックの差がそのまま勝敗に結び付かないってことだ。


「ジャンルはどうしよう。格ゲーでいい?」

「野球ゲーム……『oh this's a baseball』にしようぜ」

「いやだよ。兄さんはイカサマ技を使ってホームラン連発しまくるじゃない」


チッ。


「なら、『F-GIGA』にするか?」

「レースゲームか。いいね。じゃあ部屋からゲーム機を持ってくるよ」

「いや、俺がお前の部屋に行く方が早いだろ」


ごく当たり前の意見を口にしたつもりだった。


しかし渚は前傾姿勢になり、片手を後ろに・もう片手で人指し指をピッ伸ばし、唇に当ててウインクひとつ。


「ダメだよ兄さん。年頃の女の子の部屋には簡単に入れないんだよ」

「はっ。誰が女の子だよ……まあいい。さっさと取ってこいよ」


くそっ、こいつどんどん女の子の仕草がサマになってきてるな。

イモっぽいダボダボ灰色スウェットのくせに妙に可愛いじゃねえか。


……そんな内心の動揺をおくびに出さず、シッシッと追い払うように手を振って渚を送り出した。




「お待たせ。早速ゲーム機をセットするね」

「やたら時間がかかったと思ったら、着替えてきたのかよ」


ある程度予想はしてたが渚は女の子のまま、服装をスウェットから白のノースリーブワンピースに着替えてきやがった。


さっきのアンバランスな服装もいいが、こういう正統派な衣装は王道的なハーモニー・調和の良さがある。


だが、それ故に気を付けなければいけない。


渚があえて薄着をしているということは、いつも通り逆セクハラ攻撃を仕掛けてくるに違いない。


けど、それは甘いと言わざるを得ない。

来ると分かってる攻撃なんざ、心構えをしておけば怖くはないんだよ。


渚が何をしようと関係ない。サクッとひねってやるぜ。


という訳で、勝負開始。

先にゴールした方が勝ちというルールで3本勝負を行い、2回勝った方が最終的な勝者だ。




そして……。




「うわ……僕の兄さん弱すぎ……こっちはまだ何も仕掛けてないんだよ?」

「ち、違うんだ!」


俺は速攻で1本目の勝負を落としてしまった。

けど、それには訳があるんだよ。


たしかに渚は言う通り、何もしてこなかった……しかし、あくまであいつの認識の中においては、だ。


実際の渚は車がコーナーにさしかかる度に、持っていたパッドを腕ごとカーブに合わせ、大きく右に動かしたり左に動かしたりする訳だ。


そうすると視界の端に飛び込んでくるんだよ。ノースリーブワンピース故に丸見えな『(わき)』がさ。


たしかに胸チラやら太ももをからめた精神攻撃は警戒してたよ。

しかし、腋の下という、完全に意識の死角から飛んできた攻撃故にクリティカルヒットしちまったんだよ。


ムダ毛ひとつ無いツルッツルの女の子の腋って、ほんと艶めかしいのな。

しかも部屋が暑いせいで腋の下がほんのり赤くなって汗をかいてたら、匂いを嗅ぎたく(以下自主規制)


コホン。

まあ、とどのつまりそれに乱されてクラッシュした訳で。


「ちょっと待ってろ」


このまま2戦目を始めるまえに、俺は机の引き出しから眼鏡を取り出す。


「あれ? 兄さん眼鏡なんて今までかけたことなかったよね?」

「別に目が悪いわけじゃないからな」


これは中間テスト対策として部屋勉強のときのみ使った眼鏡で、視界を狭くする効果がある。

あえて見える範囲を狭くして視界に入れる情報を制限することで、集中力を高めることができる。


今回この眼鏡を用いたのは、もちろん渚対策だ。

これをかけていれば隣で渚が何をしても視界に入らないため、惑わされずに済むってことだ。


……そんな物があるなら最初から使っておけよ、と自分自身に言いたいところだが、忘れてたものは仕方ないだろ。


そして2戦目。

初戦を落として後はないから、絶対に負ける訳にはいかない。




「渚、お前ナメてんのか?」

「ち、違うんだよ!」


2本目は俺の圧勝……と言うか渚の自滅だった。

まるで1本目の俺を焼き直したかのように、走りに精細を欠くどころかコースアウトを連発してのマシンクラッシュ。


労せずして対戦スコアをイーブンに戻すことができた。


「まさか兄さんに精神攻撃を仕掛けられるとは思わなかった……」

「人聞きの悪いこと言うな。俺は何もしてないだろ」


渚がイチャモンをつけてくるが、当然聞く耳を持たない。


「(ボソッ)初めて見せる眼鏡姿で僕を惑わしてくるなんてずるいよ。つい見とれちゃったじゃないか……」


渚がまだ何やら言っているが小声なのに加えて、俺も最終戦に向けて集中力を高めているので、その内容までは聞き取れない。


かくして両者自滅で星を分け合ったまま、最終戦を迎えることになった。



文量ペースを間違えて、前・中・後編で纏めきれませんでした。

ゲーム対決編はもうちょっとだけ続きます、申し訳ありません。

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