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兄一コレクションと対戦ゲーム(中編)

なるほど。渚のヤツは『兄一コレクション(エロ画像データ)を返すから、代わりに俺の股間のアレ(象さん)が映ったデータをくれ』って言いたいのか。


それに対する俺の答えなんて決まりきってる。


「うん、断る」

「即答!? も、もうちょっと考えてから結論を出してよ!」


だから考えるまでもないんだよ。


「だって理不尽だろ。兄一コレクションは元々俺ので、お前が勝手に盗み出しただけだろ?」

「うっ……だけどそれを言うなら、僕がスマホで撮影したお宝()画像も、兄さんが奪ったと言えるよね?」


むくれた上目遣いでこちらを見る渚。


女の子になって体が縮んだせいで、着ている男物だったスウェットがダボダボになっているのも相まって、小動物的な可愛さを感じてしまう。


ふと頭を撫でたい衝動に駆られたが、魔法の言葉『惑わされるな』と心の中で唱えて踏みとどまる。


「そもそもコレ(象さん)については、被写体の俺が撮影許可だしてないだろ」

「そ、それは……そうだけど」


しばし考え込んだ渚だが、旗色が悪いことを察してため息をついた。


「分かった。今回()兄さんの象さんを諦めるし、兄一コレクションも返すよ」


今回『は』って、次の機会があったらまた狙うのかよ?

つうか、そもそも何でお前がこんなモン(象さん写真)を欲しがるんだよ。


普段の逆セクハラとは別に、いつでも俺に言う事を聞かせれるように弱みを抑えておこうって魂胆か?


あるいは学校の連中に回覧して、皆で俺に指をさして笑い者にするつもりか?


……いや、渚は俺を『からかい』はしても、アイツ等(・・・・)みたいに人を『貶めて』悦に浸るようなマネはしないはずだ。


「じゃあ今回の件はすべて白紙に戻すってことで、兄さんのコレクションデータが入ってるメモリーカードを持ってくるね」


うーん、象さんを欲しがる理由は考えても分からないし、渚もいったん手を引くみたいだし、動機の解明は保留にしておくか。


「あいよ。んじゃお前のスマホから、象さんを消しとくぞ」

「うん。それと『すべて白紙に戻す』から、兄さんのパソコン内の、僕のエッチな画像データも消しておくね。はぁ……使って欲しかったけど、仕方ないか」

「え? ちょ、おま、待っ………………イヤナンデモナイ」


それは明らかに失態だった。


黒髪美少女の画像データが宝物庫(Dドライブ)から消えてしまうことを一瞬惜しんでしまい、それを態度に出すという致命的な隙。


「兄さん、もしかして…………へーえ、ふーん、そうなんだね」


形勢逆転。


さっきまで失意が見え隠れしていた渚が、目に嗜虐の光を宿らせる。


「な、なんだよ? いいから、全部データを消しちまおうぜ」

「ちょっと待って」


渚の温かく柔らかな掌が、マウスを掴んだ俺の手と場の主導権を握る。


「兄さん。コレ(・・)よりもっと際どい僕のエッチな写真……欲・し・く・な・い?」

「ほ……欲しくねえよ」


ダメだ。これ以上会話を続けるのは危険だ。


惑わされるな。問答無用で全部なかったことにするのが正しいはずだ。


「うんうん、欲しいけど素直に首を縦に振れないんだよね。その気持ちはよ~く分かるよ」

「な、なに分かり切ったような口きいてんだよ? 欲しくないって言ってんだろ!」

「本当に?」

「くどい。賭けてもいい!」

「そうなんだ。それじゃあ『すべての画像データを自由にできる権利』を賭けて(・・・)勝負しようよ」


渚曰く、


『象さんの画像データ』(所有権:俺)

『兄一コレクション』(所有権:俺)

『渚(♀)のちょっと恥ずかしい写真』(所有権:渚)

『渚(♀)のすごく恥ずかしい写真』(所有権:渚)


「……の4つについて、勝負して勝った方が所有・破棄・譲渡を選択できるってことでどう?」

「いや、賭けるってそういう意味で言った訳じゃないだろ」

「いやなら辞めてもいいよ。こんなか弱い女の子(・・・・・・)から挑まれた勝負から逃げても、もちろん兄さんを情けない男だなんて見下したりはしないよ」


『だって』と渚は諳んじるように続ける。


「兄さんがヘタレでダメダメなのは、もう十分に知ってるからね」


――イラッ。


「それにね、『勝敗は常に顔で決まる』っていう格言を知ってる?」

「上等だコラ! 兄より優れた()なぞ存在しねえって事を教えてやる!」

「きゃー。()こわーい」


ピンク色で語尾に(はぁと)とつくような悲鳴で煽ってくるマイブラザー(シスター)


正直乗せられた感が半端じゃないが、少しだけ現状を楽しんでいる自分に気付く。


これまで俺は、『どうせ勝負するだけ無駄だ』とハナッから諦め、渚と競い合うことをしてこなかった。


けどいまは勝ち負け以前に、兄()で何かをして時間を共有することに価値を見出しはじめている。


例え、おちょくられたりからかわれることがほとんどであったとしても。

例え、結構な割合で『からんでくる渚ウゼー』って思うときがあるにしても。


一人でいるよりは遥かにマシだということに、全裸土下座からの冷却期間を経て気づいちまったからな。


そう。

だから景品の『渚(♀)のちょっと恥ずかしい写真』と『渚(♀)のすごく恥ずかしい写真』に目がくらんだ訳じゃないんからな。


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