基地へ戻るヘリ内にて
「私だ。ミラだ」
ミラとナマリ、そしてフィリアを迎えに来たヘリ内でミラは無線機を手に取り誰かに連絡を入れた。
「はいはい、そんで新人ちゃんはどうかな? 確か新人研修だったよね? 伝説と言うか最強と言うか……ラスボス級の吸血鬼の封印の確認」
応答した男は軽いノリで対応する。
因みにこの通信はナマリとフィリアには聞こえてない。と言うか、フィリアに関してはミラから受けた火炎弾から未だ回復してない状態だった。現状フィリアは上半身が消し飛んでおり、とりあえずナマリが下半身のマネキンを椅子に固定していると言うシュールな光景になっている。
「その件だが、一部予定変更になった」
ナマリがマネキンもとい、下半身だけのフィリアを椅子に固定し終えてるのを様子見ながらミラは通信を続ける。
「ん? 予定変更? 何かあった?」
「吸血鬼の封印が解かれていてな。とにかく無害のようだからそっちに連れていく」
「は? なに? どゆこと?」
鳩が豆鉄砲喰らったとはこんな感じなんだろうとすっとんきょうな声を漏らす男。だが、ミラはペースを崩さず続ける。
「言った通りだが?」
「お前はそう言う冗談を言う奴だったか?」
「とりあえず備えとけ。無害とは言ったがとりあえずな……」
「何それ、怖い」
淡々と述べるミラに対して男は言われる内容に無線機越しでも分かるくらいに声色が変わる。
「到着までに原型留めてるかも怪しいがな」
「何があったか気になるんだが……」
「では切るぞ」
「え? ちょっ! もう少し詳しく…………」
そこでミラは一方的に通信を切った。
ナマリはと言えば徐々に再生していくフィリアを身体を興味津々に見ていた。
「すまんな」
「え? え? な、何がですか?」
急なミラの謝罪に完全にフィリアに集中していたナマリは半場驚きながら反応する。
「完全に意識がそっちだったな」
「すいません、再生能力って初めて見たので……それで、何の謝罪ですか?」
「研修とは言え、ナマリにとって初の任務に支障が出たからな」
「そんな、逆になんか刺激的な研修になりましたよ」
「そうか、それなら良いんだが……」
ナマリの言葉にあまり納得してないミラはふと溜め息をつくと、視線がフィリアの方に向いた。
フィリアはようやく腹部辺りまで再生していた。
「ふむ、回復が遅いな。吸血鬼だからもっと早く再生すると思ってたが……」
「え? そうなんですか?」
「人間の再生能力者の場合、能力者自身が再生速度をコントロール出来るらしい。まぁ、フィリアが人間だったとしても、現状頭が吹き飛んでる状態だからコントロールは困難か……。だが、コイツは人間じゃなく吸血鬼だ。」
なるほど、それならフィリアは人間より回復が早いのかもしれない。
「個人差的なものなんですかね? 吸血鬼でも遅い早いあるとか……」
「力を失ったと言ってたが、再生にも影響あるものなのか?」
「この様子だと関係無いとも言えない感じですね」
やれやれと言う感じのミラだが、そもそもフィリアをふっ飛ばしたのは誰でもないミラ本人な訳で、加減すればもう少し再生も早かったのではと疑問に思うナマリだが、あえてそこは黙っていた。
それよりも、ミラはどうしてフィリアの再生速度を気にしてるか。
「なんでフィリアさんの再生のこと気にしてるんですか?」
「それか? 勿論、基地に着いたら自分で歩ってもらわないとな。担いで持っていくのは面倒だ」
つい尋ねて出てきた回答は子供っぽい理由だった。
「え? あの、基地の方でそう言う係とか……」
「ん? 回収班とか使うまでのもんでは無いだろ?」
面倒と言ったのに使わないんかい! と心の中で思うナマリだった。