気が付けば3人で食事してそれから……
「助かったー! もうずっと何も食べてなくて死にそうだったの。あ、私不老不死だった」
「まさかとは思ったが、やっぱりお前が怪物か」
「不老不死なのに餓死寸前ってなんか矛盾してるような……」
「不老不死でも空腹になるのは私も初めて知ったことなんだよね」
さて、何の変哲もない野営に近いランチタイムの一時。
1人はスタイル抜群のお姉さんと言うとしっくりくる金髪ショートカットの女性
1人は対称的に子供体型で新人と書かれた腕章を付けた黒髪サイドテールの女性
1人は小学生くらいの痩せ細った身体に真っ赤で床に付くくらいロングの髪の全裸の女性。だが、手足は身動き出来ぬよう何重にもロープが巻き付けられ、身体は亀甲縛りされてる。
「あの、先輩…………。どうして亀甲縛りなんですか?」
「ん? なんかおかしいか?」
「目のやり場に困るんですけど……、しかも食べさせてる身だと余計に」
「気にするな。それに奴は小学生じゃない、合法だ」
「誰もそんなこと聞いてないですって」
「はやく、食べさせてー」
「こちらも此方で小学生みたいに無邪気ですね……」
さっきまでの緊迫した空気は何処へやら……。
そして怪物だと恐れていた少女は今や餌付けされてる犬のような状態である。
「お前、本当に怪物だの何だの言われていた吸血鬼か?」
「そうだよ。私がラスボスだよ!」
「そんな格好で言われてもな」
「それはアンタがこういう風に縛ったからでしょ!」
今の状態で怪物少女に威厳も怪物と言う肩書きもどれも意味など成さなかった。ただの縛られた空腹な小学生……とでも言えば良いのだろう。
「さて、今後どうするかは置いといて。色々話して貰うか。どういう経緯で封印が解かれ今に至るか」
昼食を済ませ一段落してから先輩が切り出した。
「まさか、食事の恩を蔑ろにしようとかは思わんよな?」
「思わないよ。それに、漸く話を聞いてくれそうな人達に会えてこっちも良かったって思ってるんだよ。遭遇すればみんな討伐だなんだって人の話を聞きやしない」
プンスカと言う表現が似合う怒り方をする少女を見てナマリと先輩は、そりゃあ要注意人物で出会うな危険で、怪物と呼ばれてればなぁと2人は思う。
「あ、私のことだよね。とりあえず名前分からないと不便だよね。私の名前はフィリア・ガーネット。フィーとでも呼んで」
怪物の威厳やら何処も感じられず、雰囲気は怪物と話してると言うよりは完全に小学生体型の女子高生との会話である。これが本当に500年世間を騒がせた怪物なのだろうか。
「フィリアだな。此方も名乗っておこう、私はミラ・ルージュ。ミラで良い」
「あ、えっと、黒金 鉛です。ナマリって呼んで下さい」
怪物、フィリアに合わせ2人も名乗るとフィリアは改めてマジマジと2人を見る。
「わー、宜しくね!」
「ところで、その話口調は素なのか?」
「違うけど、こんな感じの方が話しやすいかなって」
「素の話し方で構わんぞ?」
「んー、本音は100年くらい眠ってたから素を忘れたと言うか……今どんなだったか模索中と言うか」
ミラの言葉に腕を組んで素の話し方とやらを思い出そうとうんうん唸るフィリア。首を捻るが思い当たる節は見つからないようだ。
「年寄りは駄目だね。忘れちゃうねぇ~?」
「そのなりで年寄り言われてもな」
「見た目は完全にランドセル似合いそうですもんね……」
ケラケラ笑いながらフィリアは言うが、2人はその言葉に違和感を覚えた。容姿が変わらず数百年過ごすというのでさえ信じがたいが、今こうして2人の前にランドセルが似合いそうなお年寄りがいる訳で……。
「難しい顔してどうしたの? とりあえず素やら、話し方は徐々に思い出すとして。何処から話そう? 封印が解けた辺りからかな?」
うーん? と首を傾げながら何処から自分のことを話そうか整理して、フィリアはゆっくり口を開いた。