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第4話 ブサメン塔頂す。

 6階の通路にて、凛々しいお顔の黒ヒョウの剣士と出会った。

 装備は薄い黄色の服の上に濃い紫色の金属の胸当てを着けており、腰にはサーベル。

 こげ茶の皮のポーチもあったので、さっそく中をチェック。

 銅貨と銀貨と金貨が数枚ずつと、植物を包んである袋が数個、試験管のような細いガラス管が1本あった。

 ポーション的な物だろうか…。

 よく分からないが、いいかげん学ランのポケットがかさばってきたので、ポーチごと貰った。


 次は腰に差してあるサーベルを鞘から丁重に抜く。

 うん、持てるけど重い。

 ちゃんとした武器を人生で初めて手にして、ちょっと感動である!

 草刈りの鎌とは全然違うな。

 周りに当たらないように素振りをし、ふうう~と満足したので鞘に戻す。

 戦いになったらこれを振り続けないといけないって大変だわ。


 廊下を先に進む。

 今度は黒ヒョウの剣士が、首に赤いスカーフをファッショナブルに巻いているリザードマンに、何か指示を与えてるような姿で停止していた。

 人差し指をリザードマンに向けてて「おい、分かったのか?」的に見えて面白い。

 外や下階で見たリザードマンは、赤い舌をチロチロと出している者が多かったが、このリザードマンはギュッと口をつぐみ、ちゃんと聞いてますオーラを出している。


 黒ヒョウの剣士の装備は同じだったが、左手の薬指にシンプルな金の細い指輪をしていた。

 こぶしを握っているので指輪は取れないが、ひょっとしたら結婚指輪かも。


 傍らのリザードマンは、今までのリザードマンより頭ひとつ分は大きい。

 スカーフを巻いてるとこから見ても、リザードマン達のリーダー的な立場なのかもしれない。

 リザードマンより上の立場が黒ヒョウなのだろう。

 違う種族でも会話が成立してるのか確かめたくなり、近くの部屋に隠れてから《時間停止解除》して耳を澄ます。


「ウガア。ァガアア」

「グゴゴゴ。グゴ…ゴア」

「ウガガァ。ガァー」


 交互に話してるので通じ合ってるようだが、意味は当然分からない。

 これ以上聞いてても無意味なため、再び《時間停止》する。ついでに部屋を調べて通路に出たら、2匹ともこちらを向いてたので驚く。

 あの短い時間に嗅覚などで発見していたのかもしれない。

 わずかな油断も危ないと感じた。


 黒ヒョウの剣士は他にも6頭見かけた。

 机に向かい書き物をしてる黒ヒョウもいたが、ミミズの這ったような文字のため読めない。

 書き間違いなのか、インクでぐしゃぐしゃと塗り潰されてる箇所がいくつもあり、「こいつも国語が苦手なんだな」と思った。


 この階を機に黒ヒョウの数が増えてきた。

 持ち物も羽振りがよく、所持金とポーションでポーチが満杯になったので、帰りに持とうと思い7階に置いておく。


 8階・9階とも相変わらず黒ヒョウばかりだ。

 良い感じの装飾が彫られたダガーが、計6本手に入ったのは嬉しい。

 新たにポーチを3つ拾うも、すぐに満杯になったので階段に置いておく。大きい袋かリュックサックが欲しいところだ。

 母ちゃんがいつか使うと、せっせと取ってある紙袋があればな~。労働したからか、冷えたコーラも欲しいところだ。

 元の世界とこちらで転送できたら便利だから、そんな魔法があればいいなと思いながら最上階の10階へと上った。


「あっ! 最上階ってことは、ボスがいるかも……」


 ずっと一人だったせいか、いつの間にか独り言を呟くようになっていた。

 階段を上がりきると両開きの扉があり、その左右には低い台座の上に、丸めた背に羽を畳んでしゃがんでいる妖魔の石像が2体あった。


「うわ! 絶対これ侵入者に反応して襲ってくるやつ!」


 ガーゴイルとか言ったっけ。

 ここって10階だけど、自分で飛んできたのか、石像なのをリザードマンが運んだのかどっちだろう? 後者ならちょっと気の毒。


 そう言えば、この階までの扉が開いていたので、閉まっているこの扉が不気味でもある。

 鍵が掛かってるパターンならどうしよう。

 面倒くさくなって見てない引き出しや、タンスも多数あるので、探しに戻るのは嫌だな。

 逆に、罠や開けたらいきなり襲ってくる的なほうが、今は時間停止中なので大丈夫なのだが…。


 取っ手を持ち「これって押すの?引くの?」と、少しガチャガチャしたら手前に開いた。

 深い緋色の絨毯が敷かれていて、応接間のような部屋のため、思わず「おお!」と言葉が出た。

 足元には先ほど見た魔法陣が白いインクのようなもので描かれている。

 魔方陣を避けるように大きめの長方形の木箱が、2列×3段で積まれていた。

 そして何より一番目を引くのは、正面奥にある木の窓を開けて、外を眺めている大柄の黒ヒョウの剣士が羽織っているマントだ。

 真っ黒の生地に、金色で複雑な魔法陣が背面一杯に描かれている。いかにもゲームに出てくる大魔法使いや、もしくはへそ出しコスプレイヤーが装備してそうな一品である。

 裾がひるがえって停止してるところなんて、フィギュアっぽい造形でカッコいい。

 ぼくの中の怪盗の血が騒ぎ、急いで近づいてマントの取り外しにかかった。

読んでいただきありがとうございます。

次回で塔編終わります。

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