第3話 ブサメン塔に入る。
塔の中に入ると、そこは石畳の広間だった。
木で作られた長机が、川の字で並んでいる。リザードマンが手前に3匹と、やや奥に4匹のグループが座っていた。奥のグループの1匹は行儀悪く机に腰かけ、両手を広げておどけたポーズを取っている。
机には少ない水の入った木のカップや、細い骨だけが残っている皿が置いてあったので、食後のひと時なのだろう。心なしかリザードマン達の表情も和やかに見えた。
さらに、奥には3つに仕切られてる石の壁があり同じ扉が並んでいる。
まずは手前の部屋から覗いてみると、板きれや、ちぎれたヒモ、折れた弓などガラクタばかり落ちている。鉄格子の窓があり、倉庫に使われてたのかもしれない。
次の部屋を開ける。
錆びていない大きな鉄の錠があったが、鍵はしてなく引っかけてある状態だった。
中に誰か入るのかなと覗くと人影はなく、木箱が積まれており、瓶も沢山ある。
木箱には薄いピンク色のリンゴがわらの中に大量にあった。一応匂いを嗅ぎ、虫に喰われてないか確認し、大きいサイズを2個、学ランのポケットにねじ込む。
先ほどの皿の中には細い骨はあったが、リザードマンは案外普通の食事なのかもしれないと思いながら最後の箱を開けたら、箱一杯に5cmを超える黒い甲虫がみっちり入っていて絶句した。
ポケットのリンゴはそっと戻しておいた。
最後は部屋は厨房だった。
調理具は整理整頓されているが、包丁も鍋も錆びが浮いている。
調理台などは薄く埃が積もっていたので、リザードマンは調理しないのだろう。いや、単純に火が怖いのかもしれない。
これで1階はすべて見終った。
魔法のエスカレーターやエレベーターはないかと期待したが、やはり階段しかなかった。
外から窓を数えたら10階だったと思う。
学校の3階を上るのにさえフーフー言い、汗をかくのに…。
広場へと戻り、リザードマンを眺めながら長らく腰をかける。
重い腰をあげ、2階に上がる。
廊下は石造りのままだが、部屋の中は緑色の敷物が敷かれている。
部屋には机、箪笥が完備されていて、ベットだけがシングルと二段ベットとの違いがあった。元々人間が住んでいた塔をモンスターが占拠してしまったんだと思う。
机の引き出しを開けると、手紙や文房具などがあり、使えそうな物は色々と頂いておこう。
銅貨や銀貨なども見つけたので、それは言わずもがなである。
次に箪笥を開けると、服もいくつか掛かってたが、みんな毛羽立っていたのと、すえた匂いがしたため手を出さずに閉めた。
扉は基本全開か半開きのため、やはり塔全体で換気中だったようだ。
モンスターはリザードマンの他、骸骨戦士も現れだした。
装備は盾と剣なのだが、みなどこかしら傷んでいる。あと、空飛ぶトラ猫もいて和んだ。
すべてを見終り3階へと上がるが、学校の階段の上りと違い、全然苦しくない。
神様に《時間停止能力》の説明を受けた際に、止まってる間は老化しないと言われたが、どうやらその間は、成長も疲労もないのかもしれない。
逆にここまで歩いたカロリーが、実は消費していないかもしれないと気付いたが、階段で膝がやられるよりはマシだな。
4階・5階。
初めはしっかり各部屋の中を見て回っていたが、徐々に飽きてきた。
廊下からちらっと覗いては、目ぼしい物が無さそうなら、とっとと別の部屋に行く。
最後に見た部屋に、新種の空飛ぶ銀猫がベットの上で丸くなり眠っていた。
これは人間の街で子猫を購入するときに、トラ猫か銀猫かで迷うな~。
右足で最後上り終えたら銀猫を購入しようと決めて、6階への階段を上る。
最後右になりそうだったので、段飛ばしして左足で着地。
無事にトラ猫に決定!
通路を歩いていくと、初めて見る黒ヒョウの剣士がいた。
黒ヒョウってネコ科のはず。ひょっとしてゲームならここは『猫の塔』とか呼ばれるんじゃないか?
ここまで読んでいただきありがとうございます。
塔はあと2回くらいで終わる予定です。