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第2話 ブサメン異世界に立つ。

 素っ裸の神様が消えた瞬間、目の前に黒い革鎧を着込んだ青黒いリザードマンがいて目が合う。


「うおっ!」

「!」


 お互い驚く。

 や、やばい!《時間停止》!


 リザードマンが腰にある剣に手を伸ばした姿で、ぼくの超能力が発揮し、世界が止まって無音になった。


 危ねー。

 一瞬、頭が真っ白になったよ。

 でも、事前に聞いた通り、念じるだけで止まった。


 瞳が大きく開かれたままの剥製状態のリザードマンを見ながら、本当にかかった事に感動した。


 凄い厚みの鱗を指先で触ろうと手を伸ばして…いや、待て待て。

 ひょっとしてこの辺りだけ時間が止まってて、鱗触ってる最中に別のモンスターに襲われるかもしれないよね。

 どこまで効果があるのか確認しないと。


 じーっと皿目にして、辺りを伺う。

 1人だるまさんが転んだをしてるような状態だが、動いてるものはいないと判断した。

 目がシパシパしただしたというのが決め手だろう。

 多分広範囲か、もしくは世界中が止まってるのかもしれない。

 この辺り確認するのを怠ったのは失敗だ。


 それじゃあって事で、鱗をツンツンしてみると想像通りやはり固い。

 剣じゃ絶対無理だな。

 鉄の斧とか、重い武器じゃないとダメージを与えられないと思う。

 さらに革鎧を装備してるから守備力増してて絶対戦いたくない相手だわ。


 その後も、「うわ! 尻尾太い!」や「目でっか!」など、恐竜好きの少年になってしまった。

 ベルトに布袋があったので興味津々で開けてみると、銅貨や銀貨が数枚。数種類の乾いた植物と黒い甲虫や鼠のような死骸が入っていた。

 銅貨や銀貨は欲しかったが、手を入れる勇気がなく諦めた。


 ここで、初めて周りの状況を見てみる。いやー、童心に返って観察し過ぎたな。


 ここは少し開けているが、基本林や森って感じだ。木の実などは全くない。

 低い植物には小さな白い花がついてるのもあるが、こういう花なのか花がみな下を向いている。


 さっきのリザードマンの他に装備の違いがあるリザードマンが数匹にいて、その内1匹には背中から無数の棘が出てる狼みたいなのを2頭連れてるのもいた。

 内1頭がこちらを向いてるので、ひょっとしたらぼくの存在に気付いたのかもしれない。

 《時間停止》がなければ、来て数秒で死んでたな…。

 普通は始まりの村や町に復活させると思うのだが…絶対神様の不手際だわ。


 あ、神様に魔法の世界に行くんだから頂戴とお願いした杖が落ちてる。

 これは神様忘れてなかったんだな。ぼくは忘れてたけど…。

 “お前のイメージを読み取ろう”と言われてイメージした通り、映画の魔法少年が使った杖と見た目ほぼ同じだ。

 拾うと思ったより軽い。映画だとユニコーンの角だったはず。

 確か初めて主人公が杖を振って使った魔法が、白い伝書鳩の使い魔を呼び出すやつ。

 で、ラストの主人公の両親を殺した悪い魔法使いとの戦いで、魔力がほとんどなくなってしまった主人公が、破れかぶれで伝書鳩を出したら、なんと悪い魔法使いは鳥アレルギーでやっつけれたんだよなーと、ストーリーを思い出しながら杖を振ってみたが、何も起こらなかった。

 せめて火の玉の1つでも出るようにお願いしとけば良かったと後悔した。

 魔法の世界だから、今後いるだろうとベルトに差す。

 あと文明に影響するとかで、持ち物を没収されたのだが、一応ポケットを探る。

 何もなかった。

 着てる学ランはいいとしても、眼鏡は没収されなかったので、こちらの世界にもあるのだろう。


 昼に事故死したはずなのに、ここはやたらと暗いなーと思って空を見上げた。

 曇り空の中、不気味な赤黒い渦が巻いていた。その渦の中心に石造りの塔がそびえたっている。絶対何かある分けあり物件だ。

 ゲームなら嬉々として進むが、リアルとなれば極力行きたくない。

 しかし、手持ちに水や食料もなく、周りも木しかないので、結局何かありそうな塔へと向かった。


 鎧や武器があれば幾らか心強いと思い、先ほどのリザードマンの装備を見てみたが、明らかに体型が違い過ぎた。剣は取れそうだが、とても扱えそうもないので諦める。


 そうそう、道中は安全のため時間を止めている。

 なので、途中にいるリザードマン達の腰の布袋もゆっくり確かめれる。みな大したものは入っていないが、黒い甲虫だけは必ず入っていた。高校生でいうならベビースター的なオヤツなのかもしれない。


 ふー、結構歩いた。カロリーもだいぶ消費されただろう。

 通学時デッキシューズだったのを、2日前からランニングシューズに変えて大正解だ。足は全く痛くないし、疲労感もない。


 地上のモンスターの種類は変わらないので、空を飛んでるモンスターにも注目しながら歩く。

 遠くて詳細は不明ながら、やたらデカいのが1匹だけいた。飛龍なのか遭遇したくないシルエットである。


 完全鳥ではないが、普通車サイズが7羽でV字に飛んでるのを見た。あのサイズで渡り鳥なのかは不明なのだが、なかなか凄い世界だ。


 小さいのも見つけた。

 大きな蝙蝠の羽が付いたトラ猫が、近くの木陰に浮かんでいた。

 近づいて見てみると、オス猫なのか牙と爪の鋭さがなかなか凶悪だ。顔は猫なので、あくびをしている姿はかわいい。

 尻尾は短くて、海外の猫でいた気がするが思い出せない。

 いや~、なじみのある動物が見れたので、安心し嬉しくなった。

 これって子猫のときからなら、飼えそうな気がする。

 町にペットショップがあれば、覗いてみようっと。

 子猫購入という目標が出来たので、次のリザードマンの布袋を「逆さまにして地面にバラまけば虫に触れなくていい」ということを思いつき、初の銅貨と銀貨をゲットした。

 今までのリザードマンのも欲しかったが、戻るのが面倒くさいので諦める。


 塔の入口が見えた。

 おそらく扉の両隣に阿吽像のように立っているであろう石像もある。

 中に人が立てこもっている事を願っていたのだが、扉が全開だった。

 なんとかホイホイみたいな感じで、誘われてる気もしないでもない。もしくは換気中か。


 石像はよくあるマッチョ系で、力こぶスタイルの両手首には、これまたよく見る石のトゲトゲの腕輪をはめていた。うっかり自分に刺さらないのかな? と思う。

 敵が近づくと、ゴゴゴ…と動き出すタイプかもしれないが、確かめようとは決して思わない。

 さらに正面に回り込むと、胸部にヤギの顔が逆さまに付いていた。

 なぜ逆さまなんだろうと思いながら、通り抜けて塔の中へと入った。

読んでいただきありがとうございます。

次回から塔の中編です。

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