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第8話 ブサメン勇者と会話す。

 塔の厨房で一旦《時間停止解除》をして、1分くらい経った後に再び《時間停止》をし、妖精の前にて《時間停止解除》をする。

 うん。瞬間移動の形式に慣れてきた。


「もう! 勝手に一人で行かないでください!」


 妖精に怒られたものの、うめしゅんの容姿を伝えたところ、どうやら勇者で間違いないようだった。

 名前はアーク・ザラットで元は騎士とのこと。

 勇者の子孫が勇者ってわけじゃないんだ。

 勇者も含めて8人だったと告げると妖精は「え! そんなに少ないのですか!?」と驚いていた。

 テレビゲームなら入れ替え制で普通なのだが、勇者一行は本来なら数十人規模で行動するらしい。

 もう、RPGというよりSLGシュミレーションゲームに近いよね。


 あと、気になった春川あやなのことも聞いてみたら、妖精は「へ~、そうですか。ふふふふ」と意味ありげに笑いながら教えてくれた。

 彼女の名前はキシャエル・スーンと言い、女性で初めて神殿長に就いたらしい。

 男性社会の中、彼女は頑張って高い地位に就いたんだなーと思っていたら、妖精は「残念でしたね」と悲しそうに言った。ん、何故? 釣り合わないねってことなんだろうか?


「さ、では、勇者様の元に連れて行ってください」


 瞬間移動を期待しているアーモンド型の目をわくわくさせた妖精が言った。



 荷物を背負って、腰にポーチをくくりつけ、手に妖精のいる鳥籠と、赤い魔剣を持って、時間が止まってる世界をテクテク歩く。

 先ほどより幾分塔に近づいている森の中の勇者一向を見つけた。

 近すぎると相手が驚くと思うので、ちょっと距離をとって《時間停止解除》!


「ぬわ!?」

「ええっ!?」

「キャッ!」


 突然現れたぼくに勇者一行が目を見開く。

 うん。まあ、そうなるよね。

 先頭の戦士が切りかかるつもりか剣の柄に手をかけたので、慌てて「あ、怪しい者では」と言いかけたぼくの声に「勇者様ー」という妖精の声が重なる。

 一息のちに「え! ピポリ?」という勇者の声が聞こえて、戦士の気が緩んだ気がした。

 妖精の名前ってピポリって言うんだ。という思考の中、戦士の対応がなんかリザードマンとの初遭遇を思い出された。

 曲者! 問答無用! って切りかかれるかもしれないから、今後は念のために盾を持ったほうがいいなと思った。


 妖精のピポリが間に立ち、自分に起こった出来事に含めてぼくの紹介をしてくれたのはとても助かった。

 ただ彼女、ぼくの情報を包み隠さず全て伝えてくれるため、伝説の魔法使いの子孫じゃないが瞬間移動の魔法が使えるという発表のあと、皆が驚愕してる最中に春川あやなの事を聞かれたよと言ってくれた。

 周りがどう反応していいのか戸惑っているようだ。そして、さらにえっへんとばかりに、


「勇者様。魔障域の秘密が分かりました!」


 と告げ、実は、と続けようとしたところで、


「ちょっと待ってくれピポリ!」


勇者が両手を前に出し、ストップストップの形をとっている。


「君から聞く情報が多すぎて、ついていけていない!」

「私もです。音や探知を遮断する魔法陣の存在から驚いていて……いやはや」


 と部長顔の神官が言う。皆もそれぞれの感想を言う中、一人うんうんと頷いていたプロレスラーが、


「いやあ、それよりピポリ様の息がよく続きますな~」


 とガハハと笑っている。その隣の春川あやなが頬に手を当てながら、


「最後になぜか私の名前が聞こえたような……」


 と首をかしげている。余りの情報過多についてこれていなかったらしい。


「一度、話を戻したほうが……」


 勇者が提案する後ろから、


「勇者様。大変失礼ですが、現状を考えたところ“魔障域の秘密”が一番重要です。先ほどまではこの先の塔を中心に渦を巻いていたのですが、移動したのか今はこの辺りが渦の中心になっている気がします」


 モデルが空を見上げながら言う。皆もそれにつられて顔を上げる。


「それに、今のお話中にトラウが魔獣の嫌臭玉を2つ使用しております」

「本当か?」


 慌ててうめしゅんが髭の盗賊を見る。男は無表情で頷く。


「ピポリ。すまないが、魔障域の秘密をなるべく手短に話してくれないか」

「分かりました」


 うめしゅんに急かされて妖精は早口で喋りだす、


「眼帯を付けた黒獣の剣士が水晶球を持っていたのですが」


 眼帯の剣士という呟きが戦士から漏れる。戦士をチラッと見て妖精に視線を戻したうめしゅんが「続けてくれ」と促す。


「はい。その水晶球が魔障域を生み出す魔道具でした。今は塔の最上階から持ってきて、魔法使いさんの荷物に入っています」


 部長神官がなんと! と驚き、うめしゅんがぼくを見る。


「その水晶球を見せてくれませんか」


 うわ! うめしゅんと目があったよ! という感動に包まれながら、「はい」 よろこんで! とばかりに慌てて背の荷物から水晶球を取り出す。げっ! 興奮して包んでた布から出して素手で持ってしまった。差し出した水晶球を皆が息を飲んで見ている。


「確かに禍々しい魔障域の空と同じですな」


 部長神官が言う。

 いやいや、誰か持ってよ。皮膚から邪悪な何かが体内に入りそうで怖いんですけど。

 うめしゅんが皆を見ながら、


「この場で壊すなり封印するなりどうにか出来ませんか?」

「調べないと難しいですが、この場では……」


 まずモデルが答え、


「封印するにも魔力が大きいため無理ですわ」


 と妖精は言う。うめしゅんが春川あやなを見たが、悲しそうに首を振っただけだった。


「急いで城に持ち帰り、魔道協会に連絡すべきだと思います」


 部長神官が言う。顔がシュッとした盗賊が


「魔物が続々こちらに向かって来ています」


 と普通の顔で報告する。


「その球を取り返しに来てるな。さすがに、これでは隠れるだけ無駄だ」


 真上の渦の中心を見た戦士が言う。


「速やかに退却しよう」


 厳しい目をしたうめしゅんが命令を出し、悔しそうに呟く。


「今の俺では眼帯の剣士には勝てない……」


 んーと……、眼帯の剣士ってあの黒ヒョウの剣士の事だろうか? いや、それよりも誰かこの魔物が狙ってる球を持ってくれませんか?

ここまで読んでくださりありがとうございます。


次回は目立ちまくりの退却劇となります。

ブサメンもちょろっと活躍します。

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