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多重人格のヒロインを手伝う件について  作者: るなふぃあ
第二章 面倒事は赤点野郎に
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頼むから押し付けないでくれ

 やるべきことは決まった。赤点を回避するように勉強しつつ、海梨の手伝いをする。

 一度した約束を破るつもりは毛頭ない。たとえそれが自分に全く関係がないことだとしても。

 だから今すぐにでも海梨を生徒会長に導く方法を考えたり、赤点を回避するための勉強をしたいところなんだけど。

 それらをやる前にすべきことがある。

「ちゃんと来たようだな。安心したぞ」

 生徒会室に入るなり、海梨が待っていましたと言わんばかりに書記専用室から出てきやがった。

 そう。テストで赤点を取ってしまったせいで、今から雑務をしなければならないんだよ。

「まあな。今日サボれば二日連続で雑務をしなきゃいけなくなるし。それに例のイベントが近いから面倒なことはなるべく早く終わらせたいんだ」

「良い心がけだな。確かに明日からはより忙しくなるだろう。そのせいか今日はかなり仕事が少ない。ちょっとした休日と捉えたらいいのかもしれないな」

「そりゃついてるぜ。俺がする仕事も少ないってわけだ」

「何を言っている。雑務はたくさんあるぞ」

「え、マジで? 今仕事が少ないって言ったばかりじゃねえか」

「赤点を取る連中のために雑務を残しているからな。どうやら今日テストが返却されたのは一年生の日本史だけだったらしい。そのせいか生徒会の雑務に宛がわれた人材はユウ一人だけ。よかったな、たくさん仕事があって」

「よくねえよ……」

 嬉しそうに言う海梨を見て深いため息が出た。さすがツンツンモード。 相変わらずドSだ。どれくらい仕事を残しているのかは知らないけど、一人でこなすのが大変なのは間違いないだろう。

「しかし私も鬼じゃない。今日自分がすべき仕事はほとんどないからな。終わり次第手伝ってやろう」

「お、それは助かる」

 ツンツンモードにしては珍しい一言。これはもしやデレデレモードに!?

「勘違いするな。これはお前のためじゃない。他のみんなもその予定だから、私だけが手伝わないわけにはいかないのだ」

「そうですか……」

 訂正。ただ仕事に熱心な、もとい空気を読んでいるだけだった。

「で、今日の雑務はなんだ? ちゃちゃっと終わらせて寮へ帰りたいんだけど」

「そう急かすな。ほら、これだ」

 海梨が手に持っていたフォルダーを開き、プリントを一枚渡してきた。

「あれ? 一枚だけ? まさかこれで全部?」

 たくさん仕事があるというわりには少ない気がするんだけど。

 ちなみにそのプリントに書かれている項目は全部で五つ。内容までは確認していないけど、五つ程度ならすぐに終わりそうだ。

「安心するのはまだ早いぞ。それで全部だが、問題はその内容だ」

「やっぱりそうきたか」

 いくらなんでも少ないと思ったんだよな。どうせ面倒くさいことばかりが載っているんだろう。

 書かれている五つの項目に目を通していく。

 基本的には実現不可能な要望を送ってきた奴らにできないと正直に答え、彼ら彼女らを説得することが雑務のお仕事。

 しかし、今ここに載っているのは、

「おっ、不良どもに殴られることはねえのか」

 そう。なんと驚くことに無茶ぶりな要望に対する説得が一切書かれていなかったのだ。これはありがたい。昼間に祈った甲斐があったのかも。

 でも、結構時間がかかりそうな仕事が多いのも事実なんだよなあ。って明らかに生徒会とは関係のない雑務まで!?

 学長室においているチェーンソーの回収。及び林業部へ配達。

 これはどう考えても学長の仕事だろ。自分で借りたくせに返すのを生徒会に押しつけたのか。全くもってダメダメ学長だな。

 しょうがない。他のと比べて重労働だしこの件は海梨に任せるとしよう。

「俺は上から順にやっていこうと思う。だからもし早く終わったら最後に書かれているやつをやっといてくれ」

「最後に書かれているやつか。別に構わないが、あぁそうだ忘れていたぞ」

「なんだよ」

「最後のやつは学長からお前専用に頼まれたやつだ。そもそもこれは私たち生徒会の仕事じゃない。どうして学長室にチェーンソーなどという物騒なものがあるのかは知らないが、ユウ、先にそれをやってくれ。お前専用の仕事だからな。言われても私たちは一切手を貸さないぞ」

「おいおい、マジかよ」

 んな薄情な。それにあの叔母、ほんと勘弁してくれよ。俺に断りもなく自分の仕事押しつけてんじゃ――

『文句を言わずにしっかりやるのだぞ』

 不意に学長室での出来事が蘇った。

 あ、もしかしてあのクッキー、こっちのことだったのかよ。勉強の方を応援されていると思っていたのに!

「ほら、さっさと行ってこい。それが終わったら初めに書かれてあるやつからやるのだぞ」

「へいへい」

 俺は面倒だと思いながらも学長室を目指すことにした。

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