アホの子だった
何がどうなっているんだ?
訳がわからなかった。
部屋に侵入してきた人物は痴女モード。
つまり、会長たちと戦うと宣言した本人である。
そいつが、陽花を拘束しに来たってことは――。
「私を差し置いて夕さんとえっちぃことをしようなんて許しませんからね!」
違った。
忘れていた。こいつは痴女モードだった。
「お前、わざわざそんなことを言いにここへ来たのか?」
「当然です! ある程度のことは盗み聞きしたのでわかっていますが、清水さん。あなたは信用なりません。今まで接してきた清水さんではないのですから、いつ何時夕さんを魅惑してもおかしくないです!」
「あなた、わたくしを何だと思っているのよ」
「ツルペタボディで夕さんのペド心を煽る敵です!」
「ツルペタですって!?」
「そのツルペタボディは特殊性癖を煽ること間違いありません! 夕さんが幼女大好きペド野郎に目覚めたらどうするんですか!」
「……頭痛がしてきたわ」
「俺も。そもそも俺は幼女好きじゃねえよ」
陽花と共に盛大なため息を吐く。
ポンコツだった。
三人目の海梨は、想像以上にアホの子だった。
「ところで霧崎さん。彼女は一体何者なの? 全然雰囲気が違うのだけど」
「三人目の海梨だ。この通りポンコツだけどな」
「なっ!? ポンコツじゃないですよっ!」
ぷくっと頬を膨らませて怒る痴女モード。
その表情が如何にもアホの子っぽさを醸し出しているんだけどね。
「こいつのことは放っておいても問題ない。そのうち元の海梨に戻ると思うから」
「そう。それならいいわ。じゃあ早速、父上に電話をしてあの件について相談を」
「私のことは無視ですか!? 無視なのですか!?」
「うっさい、お前は黙ってろ」
「あーうー」
しょぼくれた痴女モードが部屋の隅っこで体育座りをした。
「どうせ私は、アホの子、アホの子なのですよぅ」
あれ? 意外にも落ち込んでいる?
痴女モードに近づき、顔の前で手を横に振る。
「おーい、大丈夫か?」
「アホの子、ポンコツ……私はポンコツ」
「おーい、大丈夫」
「なーんて、かかりましたね!」
「どわっ!?」
勢いよく抱き着かれ、マ、マウントポジションを取られてしまったじゃねえか。
「さぁ、夕さん。観念するのです。一体清水さんとどんなえっちぃことをしようと話し合っていたのですか!」
「してねえよ! ていうかお前、さっき盗み聞きをしてある程度のことは聞いたって言ったよな!?」
「な、なんのことですか? そんなこと知りませんっ」
「なぜ目をそらす」
「とにかく、夕さんは私だけのものなのですっ!」
「ちょ、くっつくなって! もごっ!?」
柔らかな弾力が俺の顔面を覆い尽くした。
「もごっ、もごぉっ!」
「ひゃんっ。もう、口動かさないで下さいよ。くすぐったいです」
「そうは言ってもぐぉッ!?」
「ひゃぁっ」
「ちょっとあなたたち。わたくしの部屋で何やっているのよ。そんな卑猥な声を出されたら電話しようにもできないじゃない」
「とか何とか言って、本当は私たちがやっていることをうらやましいと思っているのでしょう?」
「その目ムカつくわね」
「嫉妬ですかぁ?」
「この女……」
スマホをテーブルの上に置いた陽花が近づいてきた。
おぉ、陽花助けてくれるのか!
と思いきや、右手を伸ばし、むにゅんっ。
「ひゃんっ!」
「そんなに巨乳であることを主張したいわけ!? このっ、このぉ!」
「ちょっ、揉まないで下さひゃんっ! 私は、女に興味なんてあんっ!」
鼻血が出そうだった。
だって、たるんたるんのばいんばいんって。
俺の目の前で巨乳が跳ね、形を変える。
陽花の手捌きも恐ろしく、テ、テクニシャンすぎる。
「いい加減そこから離れなさい!」
「い、嫌ですっ。夕さんは私のものなのです!」
「引きちぎるわよ!」
「だ、だめですよ。ぶしゃぁって、ぶしゃぁって出ます、私の血が内臓が!」
「気持ち悪いこと言わないでよ」
「そして再生したおっぱいが更に大きくなるのです! さぁ、一思いにやってください! ぶちっと!」
「あなたどっちなの!?」
無茶苦茶だった。アホの子と真面目に取り合ったら大変な目に遭いそうだ。
「で、やるんですかぁ? やらないんですかぁ?」
「もうなんなのよあなたは……」
陽花が疲れた顔をして引き下がった。
さすがの彼女でもアホの子には勝てなかったらしい。
痴女モードがえっへんと胸を張った。
「ふふーん、どうですか。これが私の実力ですっ」
「はいはい、わかったからそこどいてくれ」
「了解ですっ」
素直に言うことをきいた痴女モードが立ち上がった。
よし、今だ!
俺は即座に陽花とアイコンタクトをし、痴女モードの腕を拘束する。
「きゃっ!? ちょっと夕さん、一体何をして」
「陽花!」
「ええ、わかっているわよ」
「むぐっ!? んん、んんんー!?」
陽花がガムテープで彼女の口を塞ぐ。
「とりあえずこれで少しは静かになると思うけれど、これだけじゃダメそうね。ちゃんと拘束しておかないと」
「だな」
タオルを使って痴女モードの腕を縛り上げ、部屋の隅に体育座りさせる。ついでに黒いタオルで視界も奪っておく。
「こんなもんだろ。陽花。すぐさま親に連絡を」
「そうね。拘束を解かれる前にさっさと電話しておかないと」
陽花がスマホを手に取り、操作をし始める。
ふごー、ふごー、と呻りながら必死に拘束を解こうとする痴女モード。
「しかしアレだな、傍から見たらすごい光景だよな。犯罪臭しかしねえ」
「確かにそうね。絵面が悪すぎるわ」
「しかもスマホ持っているからな。今から写真撮ってバラすぞって感じ」
「そんなことしないわよ。でも知らない人が見たら通報ものね」
「そうですね。通報させていただきます」
「「え?」」
「んぐ?」
不意に上がった声の方を陽花と俺が向き、痴女モードが首をかしげる。
「どうも弐海です。生徒会長専属の情報屋をさせていただいております」
ここにきてまさかの新キャラ登場だった。




