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多重人格のヒロインを手伝う件について  作者: るなふぃあ
第六章 第三の人格、痴女モード
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あれ、こんな痴女が幼馴染だと!?

 陽花に裏切られたことで頭がいっぱいだったけど、それどころじゃなくなった。

 そう。なんと海梨が新たな人格を生み出してしまったのだ。

 しかも三人目だぞ、三人目。

 二重人格でも異常なのに、まさかの三重人格。

 おまけに生まれた瞬間まで見てしまった。

 三人目の海梨が生まれた原因は間違いなく陽花の裏切り。

 人間不信。

 そこから生まれてしまった人格が、彼女なのだろうけど、

「ねえ、夕さん。先ほどから黙っていますけど、何を考えているんですか?」

「おかしい、絶対におかしい」

「何がですか?」

「だってここは俺の部屋。二人きりで密室なんだぞ」

「ええっと、それが?」

「デレデレモードだよ、デレデレモード! なんであの可憐な海梨が出てこないんだよ!」

「そんなことですか」

「そんなことじゃねえよ、俺にとっては重要なことなんだよ!」

 デレデレモードの存在。

 そう。彼女こそが俺にとって唯一の救いなのに。

「その様子だと思ったよりもダメージを受けていないみたいですね」

「ダメージって?」

「清水さんの裏切り」

「あ、あぁ……あれは、その、なんだ。それどころじゃないというか、さ」

 改めて彼女を見る。

 大きく変わっているところはないけど、表情だけは見慣れないものだった。ツンツンモード特有の物騒さを感じることもなければ、デレデレモード特有の守ってあげたくなるような雰囲気もない。

 ただただ、普通。

 冷静沈着な、いや、どちらかというとアホっぽい雰囲気のある海梨だ。

「なんて呼べばいい?」

「何がですか」

「もちろんお前のことだよ」

「え? 普段通りでいいじゃないですか」

「それは嫌だ」

「なんでですか」

「なんでって、それは」

 海梨であって、海梨ではないから。

 そう。こいつは俺が知っている海梨じゃないから。海梨であることに違いはないんだけど、全くの別人。名前で呼ぶことだけは避けたい。

「失礼じゃなければ何でもいいですよ」

「わかった。じゃあ、何か」

「私は得体のしれないものですか、化け物ですか! 心に深い傷を負いそうです!」

「ごめん、冗談だって。えっとそれじゃあ、朝日野さん?」

「こ、心が痛いです。さん付けはやめてください」

「わかった、朝日野」

「それは生意気ですっ」

 バシッ。頭を叩かれた。

「ってぇな! おいお前、自由に呼んでいいとか言っておいて全然自由ないじゃねえか!」

「しようがないじゃないですか。だってあなたが失礼な呼び方をするから」

「さん付けは失礼なのかよ!」

「幼馴染なのにさん付けなんてありえません!」

「だったら朝日野でいいじゃねえか」

「それは生意気だといったばかりです」

「ったく、注文の多い奴だな。わかったよ、冷静沈着アホ面」

「あぅ、酷いです夕さん」

 しゅんとなる何か。

 うーん、すごく相手し難い。

 ツンツンモードを相手にするのも嫌だけど、この不明モードはそれ以上に面倒くさい。やっぱりデレデレモードが一番だよ。

「とりあえず呼び方については保留にしよう」

「そうですね、その方がよさそうですバズ」

「お前、ここぞとばかりに仕返ししやがったな?」

「いいじゃないですか、バズ。この名前結構好きですよ」

「そりゃバズだけ聞けば悪くないけど、由来最悪だぞ。お前も覚えているよな」

「はい! ばーかばーか&クズ野郎、の略ですよねっ」

「なんか酷くなってねえか!?」

 こいつ、結構頭おかしくないか?

「こんな私を好きになるなんて、夕さんもとんだ変態さんですね」

「お前のことは好きじゃねえよ! むしろ大っ嫌いだ」

「とか何とか言って、本当は大好きなくせに。ほんとツンデレなんですから」

 俺は無言のまま頬を染めているアホをジト目で見つめる。

 疲れた。こいつとまともに取り合ったら負けな気がする。

「ところでお前、対策を練るとか言っていたけど?」

「あ、そうですね。そろそろ本題に入りましょう。対策といってもできることは限られますけど」

「そりゃそうだろうな。あんなものを掲示板に張り出されたんだ。知れ渡るのは時間の問題。どうやってその誤解を解くかだもんなあ」

「そうなんですよ。だから私は一つの方法を考えました」

「お、それは?」

「私と夕さんが人前でイチャイチャすることです!」

「は?」

「だから、私と夕さんが人前でえっちぃことをするのです!」

「ちょっと待て、それ酷くなっていないか!? どうしてそんなことすれば解決することにつながるんだよ!」

「え? だってあの記事には私が暴力的で夕さんがチェーンソーで人を脅すような怖い人間だと思われてしまうことが書かれているのですよね?」

「まぁ、一部抜かしているところもあるけど、大まかにはそうだな」

「だったら私たちはそんな人間ではありませんよということを伝えればいいだけじゃないですか。だからこそのイチャイチャ、えっちぃ体験」

「どうしてそこでその考えが出てくるんだよ!」

「インパクトです。より印象に残ることをすれば、誰だってそっちの記憶が残りますよね?」

「まぁ、な」

「だから塗り替えてやるのです。私たちはえっちぃ存在だと」

「嫌だよ! むしろそっちの方が印象悪くなってるじゃねえか!」

「えー、そうですか?」

「当然だろ! そんな変態にこの学園を任せられるなんて考えにはならねえよ! 票は減る一方だ!」

「そんなことないですってば。とりあえずやってみましょう、えいっ!」

「どわっ!?」

 思いっきり抱きつかれた。

「あぁ、愛しの夕さん。夕さん夕さん夕さぁん!」

「ちょ、やめ、苦しいって!」

「この胸に溺れることができてうれしいんですよね」

「おま、何言って」

「ええいっ」

「ぬお!?」

 ものすごい弾力が俺の顔を包み込んだ。

 おまけに良い匂いも。

「これが、夕さんが触りたくてしようがなかった私の胸ですよぉ。ほら、触ってください。両手でしっかりと、鷲掴みするように」

「お前、何言っているのかわかってんのか!?」

「はい、もちろんです。私は夕さんのもの。じれったい想いはもうしたくないんです。早く獣化して私のすべてを蹂躙してください、旦那様」

「ちょ、やめろっ」

「もう、恥ずかしがることないんですから。ここなら誰も見ていません。今がチャンスですよ」

「なんのチャンスだ」

「それを私の口から言わそうとするんですか? やっぱり夕さんはとんだ変態ですね」

「ぐっ……と、とにかく離れろ!」

「ひゃんっ」

 変態を押し倒して立ち上がる。ふぅ、何とか逃れた。

 と思いきや、彼女は頬を赤く染め、

「逞しい、です」

「ちょ!? どこ見て言って」

「それ聞いちゃうんですか? 私に?」

「くそう、何なんだよお前は」

 すごくやり難い。初めはただの冷静沈着な海梨かと思ったら全然違った。

 こいつは変態だ。間違いなく頭がおかしなやつだ。

「私は私ですよ。それ以外の何者でもありません。それにしても、じれったいですね。どうすればあなたの理性を崩壊させることが、あっ、今いいこと思いつきました」

 下唇をペロッと舐めた変態。

 まずい、今すぐ止めなきゃヤバいことが起こりそうな予感が、

「こうすれば、いいんですね?」

 じぃぃぃ。

「すとっぷううう!」

 スカートのチャックを下しきる前に変態の腕を掴んで動きを止める。

「どうして止めるのですか」

「それは超えちゃいけない一線だ。いくらお前が変態だとしても」

「一言余計です。でも。夕さん、魅力的な身体、見てみたいと思いませんか?」

 胸を両腕で押し上げた姿を見て思わず息を呑んだ。

 眼前には一度でもいいから触りたいと思っている幼馴染の身体。

 むちっとした太ももに、魅惑的な双丘。淫らに乱れた服装は魅惑的で、思わずその双丘に手を伸ばしてしまいそうに、

「あんっ、やさしく触ってください」

「触ってたあああああ!」

「何を驚いているのですか。あなたがした行動ですよ?」

「いやだって、無意識のうちに身体が動いて」

 ふよんっ、ふにゅんっ。

 あぁ、気持ちいい!

「ひゃんっ、んもうっ、くすぐったいですよぅ」

「ご、ごめん!」

 俺は咄嗟に彼女の横腹から手を離した。

 つ、つつつ、ついにやっちまった。海梨の身体に、お腹を右手で!

「どうしたのですか? 続き、やらないのですか?」

「俺、俺は」

 ごくりと生唾を呑む。

 手を伸ばせば届く距離。魅力的な身体は拒否されることがなく、俺が望めば間違いなくその手は桃源郷まで届くだろう。

 そう。海梨は、いや、この女は俺を拒否しない。

「でも!」

 右手を左手で掴み、動きを止める。

 ダメだ。理性を保つんだ俺。

 ここで快楽に身を任せたらどうなる。理性を失ったらどうなる。

 こいつの中に眠っている海梨たちはどう思う。

 ……絶対にそんなことはできない。

 俺の目の前にいる女は、海梨であって海梨じゃないんだ。

「何をそんなに迷っているのですか。私は私であって、私ではないのです。二人の意識はありません。見られていることはないのです」

「え? 今なんて?」

 引っかかった。

 今の言葉。俺は何か大切なことを忘れているような、

「ですから、私は私であって、私ではないんですよ」

「それだ!」

「ふぇ?」

 俺はドアノブに手をかけた。

「わりぃ、痴女モード。大事なことを思い出した!」

「え、ちょっと夕さん!? 夕さあぁぁん!?」

 痴女モードの嘆きを無視して、俺は部屋から飛び出した。

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