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びんわん
むかしむかしあるところに、びんわんへんしゅうしゃがいました。
びんわんへんしゅうしゃには、おにぎりを食べるときにいってんを見つめるクセがありましたが、びんわんなのでたいがいのことはおおめに見てもらえました。
ある日、こうえんでいつものようにびんわんへんしゅうしゃがいってんを見つめながらおにぎりを食べていると、いっぴきの犬がやってきました。
犬はなにか食べものをねだりましたが、びんわんへんしゅうしゃがおにぎりしか持っていないとわかると、「びんわんなのに……」とかたを落として歩きさっていきました。
さて、のこされたびんわんへんしゅうしゃはというと、そのことばにショックをうけていました。
「ぼくは、びんわんなのになんてことをしてしまったのだろう」
びんわんへんしゅうしゃは、ひとばんじゅう泣きつづけ、つぎの日にはたんとうさっかをいじめてすっきりしました。
さっかはくやしくてギリギリと歯をならしましたが、あいてがびんわんでは手も足も出ません。
しかたがないので、さっかはしあわせにくらすことにしましたとさ。
めでたしめでたし。