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11ぴきと猫
11ぴき居る。
11ぴきは猫を取り囲んでいる。
11ぴきがかりで囲まれ恐怖でぶるぶる震える猫を眺めながら、11ぴきはそれぞれ(猫かあ……)なんて思っている。
11ぴきに囲まれながら猫は、どうやってこの状況から抜け出そうか考えている。
素早く走り抜ければ……いや、流石に11ぴきもの包囲網を抜けるのは困難だろう。
11ぴきに囲まれた猫はぶるぶる震えながら、か細く「なあ」ととりあえず鳴いてみた。
11ぴきはそれぞれ(鳴いたなあ)なんて思うだけで、一歩も動こうとはしなかった。
猫は(何故こんなことになってしまったのだろう?)と思いながら、丸くなってぶるぶる震えるばかり。
11ぴきはそれぞれ(何で猫が居るのだろう?)と首を傾げるばかり。
それはさておき、11ぴき居る。
いや、猫が真ん中で囲まれているので、正確には11ぴきと1ぴき居る。
11ぴきと1ぴき、全てが現状を理解出来ていない。
そして誰も、何が11ぴき居るのかがわからない。