空の、青
幼い頃、クラスに同じ誕生日の奴が居ると妙に嬉しかったのは何故だろう?
どうでもいいような事なのに。
で、そんなどうでもいい事をきっかけに仲良くなり、今日までその友情が続いている俺とこいつは、ある意味馬鹿かも知れないなんて思ったりする。
「何、遠い目してんだよ」
「え? あ……ちょっと昔を思い出してた」
「ああ……」
言うなり友は、さっき人に指摘したくせに遠い目をした。
「お前も」
「ん?」
「お前も遠い目をしてた」
「ああ……まあ仕方ねぇよな」
友は空を見上げる。
俺もそれにならう。
空は切ないくらいに青かった。
「……写メに撮りたいくらい綺麗な青空だな」
「ああ」
「でも電池切れちまったしな」
「仕方ねぇよな」
見上げたまま友は言う。
「明日だな」
俺も見上げたまま応える。
「まぁな」
わかっていることがある。
今は1945年で、俺たちは明日、ある島へ行く。
俺だけが知っている事がある。
共にこの時代に飛ばされた友は旧姓の祖父と同姓同名で、祖父の友は皆、島で戦死したということを。
「……もしお前が生き残ったら、孫には俺の名前を付けてくれ」
「息子じゃダメか?」
俺は笑って言う。
「ああ、ダメだ」
空の青に目を細めた。