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たのしいところ
「今日は皆で楽しいとこへ行こうな」
そう言っておとうさんはわたしの頭をなでた。
「久しぶりだもんね。家族3人でお出掛けするの」
おかあさんはそう言いながらわたしと手をつないだ。
わたしはきっとそれは遊園地だと思った。
「今日はたくさん車に乗るから酔い止めちゃんと飲みなさいよ」
車にたくさん乗るならぜったい遊園地だと思った。
「遊園地に着いたらねー、わたしネズミにとどめをさすのー!」
空手教室でわたしは年上の三木くんよりつよい。
ネズミなんかイチコロだ。
「うちの姫は君に似て武闘派だなー」
そう言ったおとうさんにおかあさんのこぶしがさくれつした。
その時のおとうさんの顔が面白くてわたしは笑った。
本当にたくさん車に乗ってたので、わたしは途中で眠くなった。
目がさめたら白い部屋のベッドの上で、わたしの体からたくさん管が出てた。
ぜんぜんたのしいところじゃない。
痛いし、苦しい。
白い服を着た人たちにおとうさんたちは? って聞いたけど誰も教えてくれなかった。
きっとわたしを置いてけぼりにして遊園地に行ったんだと思う。
おとなはかってだ。




