彼女の占術
「恋愛運は低迷。しかしながら目の前の人と付き合うと上昇」
休み時間開始早々、その女はいきなり教室に入って来たかと思うとトランプをばら蒔き、最初に言った言葉がこれだった。トランプ床に落ちてるし。
「えーっと……凄い告白ですね?」
「何言ってるんですか。私はただ占ってるだけです。占術です。仕事運は微妙。ただし目の前の人と付き合えば改善の余地あり」
いや、付き合って欲しいと言ってるようにしか聞こえないんですけど。あとクラス中の視線が痛い。凄く痛い。
「金運は悲劇的。しかし目の前の人と付き合えば劇的に上昇」
「……」
いや、やっぱり付き合って欲しいと言ってるとしか思えないだろこれ。
「えーっと……ごめんなさい?」
「何を謝っているのかわかりませんが、目の前の人と付き合わなければ凶。大凶です」
物凄く真剣な目で睨まれた……あと痛い。クラスの男子陣から何か飛んで来て物理的に痛い。
「つ……付き合って下さい」
「お断りします」
「ええ!?」
「何故なら……私達自体は相性が最悪だからです。私と付き合えば恋愛運が上がるって、それ私との恋愛運ではないんです」
この浮気者。付き合ってもいないのに彼女はそう言うと、ばら蒔いたトランプを回収して教室を出て行った。
……なんだったんだ今のは?
だがそれを考える間も無くクラスの男子陣に囲まれ、女子の皆さんからは「浮気だって……」と言うひそひそ声が。
『大凶』
その二文字が頭をかすめはしたが……これ、占い関係無くあの女のせいじゃねえか?
そんなことを思いながらも、どうすればあの女と付き合うことが出来るか考えてしまっている自分がいた。
それが彼女の「戦術」だったと知るのは二か月後の話。