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名探偵の作り方

「犯人はこの中にいます」


 探偵はそう言い切ると、その部屋にいる全ての人間をゆっくりと、けれど大仰に見回した。

 誰かの、ごくりと唾を飲む音が聞こえる。

 次に探偵は、おもむろに片手を上げると「最後まで静かに聞いて下さい」と言い、独特の抑揚を持った足取りで部屋の中を歩き始めた。


「さて、今回の事件ですが……」


 謎解きを始める探偵。だがそれが癖なのか、核心へはなかなか迫らずに、やたらと長いながらも妙に節回しの効いた前置きから話し出す。

 足を止めずに部屋を回りながら、まるで少しずつ半径を狭めて獲物を狙う何かの動物のように。ひとりひとりの目を、順番に見据えて。

 探偵の謎解きも同じように、核心の周囲を巡りながら少しずつその核心へ近付いていく。


 やがて、規則的な足音はひとりの前で止まり、謎解きもまたそこで核心に至った。


「さあ、あなたが犯人です」

「……はい」


 犯人と呼ばれた者は、虚ろな目をしながら小さく答えると力無くうなだれた。


 こうして、その催眠術師は名探偵としての名声をまたひとつ得る。

 自らの罪を他人になすり付ける形で。

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