74/132
不思議
不思議な道に不思議な入り方をすると、不思議な街が不思議な見え方をしてきて、そこでは不思議な人達が不思議な暮らしを営んでいる。
不思議な人達は不思議な言葉を不思議な使い方で話すのに、不思議と不思議な人達とは互いの意思疎通が出来た。
不思議なこともあるものだな、と不思議がりながらも不思議な人達と不思議な交流を重ねているうちに、僕はひとりの不思議な女性と親しくなった。
「あなたは不思議な人ね」
不思議な彼女は不思議そうな表情でそう言うと、不思議に肩を竦めて静かに笑った。
「何にでも『不思議』って付ける人、始めてだわ」
ねえ、だって、こうでもしていないと、不思議でも何でもない日々は僕にとってつらすぎるんだ。
そう言った僕の顔は、不思議な歪み方をしていたかも知れない。
「大丈夫。つらいことなんて、ふたりならきっと減らせるわ」
彼女に対して抱く、この不思議と暖かな感情だけが、本当に不思議な「不思議」なのだろう。