モナリザ泥棒
「えー! 私、今朝はパンの気分なんだけどー」
「何ナチュラルな発言かましてやがんだ」
あー、何から説明すりゃいいのやら。
さあ朝食でも食べるかと炊飯器からごはんをよそって振り向いたら、座ってた。
モナリザが。
で、俺の手元を見るなりさっきの発言なわけだ。
「何故だ?」
「あ、ホットケーキミックス発見!」
「勝手に捜索するな! そしてフライパンを出すな! そこにホットプレートがあるだろ! ってそうじゃねえよ!」
何しに来たのか説明しやがれと言いたい。
「大丈夫。これは夢です」
「馬鹿か。出てけ」
「……」
「……」
「……わかりました」
何だ、案外素直な奴だな。……って、
「ホットケーキミックスは置いて行け」
「これはさっき餞別に貰いました」
「あげるなんてやりとりしてないよな?」
「……」
「……」
「……ごめんなさい」
そう言うとモナリザは肩を落としながら出て行った。
「やれやれ……」
鍵を閉めたことも確認し、改めて朝食だと戻ってみると、窓からモナリザが逃げるところだった。
その手にはホットケーキミックス。
「待てこら!」
窓から飛び出し、逃げるモナリザを追う。予想以上に速いモナリザに驚愕しながらも、見失うことのないようにこちらも速度を上げる。
そして思うのだ。
そもそも何でモナリザなんだ!?




