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三段怪談
遠足の途中、点呼をとったらひとり多かった。
「何? どういうこと?」
「ひとり多かったんだってさ」
「え? え?」
「俺聞いたことある! それって幽霊が混ざり込んでんだろ?」
この中にひとり、幽霊が?
「どいつだ?」
「お前だろ?」
「いやいや、委員長が幽霊だろ」
「『委員長』って言ってんじゃん」
「わかった。田端、お前だ!」
「だから『田端』って呼んでんじゃん! 普通『お前……誰だ?』ってならねえか?」
「そんなことを言うお前が……田端だ!」
「そうだよ! 俺が田端だよ! お前ら馬鹿か!?」
結局、誰が幽霊なのかわからなかったので色々面倒臭くなってしまい、現地解散で帰りました。
勿論、家に帰るまでが遠足だ。
が……家路が遠く感じられる。
後をつけられていた。
「……田端、何故ついて来る?」
「方向が一緒なだけだろ! ホラーっぽく言うな!」
けれどな、俺はこの、素晴らしいツッコミを返すこいつをよくは知らないんだよ。
……田端って、誰だ?
「てめえ、自分が眠る寺の跡継ぎぐらい覚えとけ」
なんだそうか。
納得して俺は墓に帰った。