ねがい
「あ、また光った」
「綺麗だねえ」
この国はもうずっと、僕らが生まれる前から戦争を続けている。
たくさんのミサイルが空を飛び、国を、世界を焼いていく。
けれど、この深い山間にある僕らの村には、そんなことが本当に起こっているのかわからなくなるような、そんな穏やかな日々が流れていた。
「ほらまた!」
「たーまやー!」
何も知らない子供達は、それを花火でも見るかのようにはしゃいでいる。
そこで何百人の人が焼かれていたとしても、この村には関係無かった。
国に忘れられたこの村は、世界からも忘れられている。
「わあ! 大きい!」
「凄いねえ!」
一際大きな光が灯って、それを最後に全てが真っ暗になった。
「もう終わりかな?」
「そうかもしれないね」
いつか全てが焼け野原になれば、この戦争も終わるかも知れない。
けれど、僕はそれが恐ろしかった。
たとえば、いま隣の子と笑い合っているあの子は、戦争が終わって大人たちが帰ってくれば、また殴られ続ける日々が待っている。
ほかの子だって、僕だって同じようなものだ。
ようやく笑顔が戻ってきたのに。
僕らには平穏な“今”だけあればいい。
だから。
僕は密かに「戦争よ終わらないで」と願った。