かさぎさん
かさぎさんの仕事を手伝うようになってから、かなりの年月が過ぎた。
「……この仕事って、続ければ続けるほどやりづらくなりますね」
「ええ。でもキズキくんはまだ楽でしょ? 私なんてもう大変」
そう言ってかさぎさんは長い黒髪を揺らした。彼女はどこか古風で穏やかな物腰をしている。
「でも良かった。キズキくんが手伝ってくれるようになってから随分楽になったのよ?」
そう言ってほんわりと微笑む。
初めて会った時にもこの笑顔を見せられて、僕は一発で恋に落ちてしまった。だからこの仕事はずっと続けていたいと思っている。
一緒に、その終わりまで。
「今日はここね」
そう言って指し示された名前には見覚えがあった。
「僕が行きます」
ドアをノックする。程なく出て来た老婆は、僕を見ると目を見開いた。
「……お兄ちゃん!?」
「老けたなマユ」
僕の後ろでかさぎさんが言った。
「お迎えに来ましたよ」
若くして死んだ者は一族の為の死神となる。
期限は、その血筋が絶えるまで。
僕は御先祖様に恋をしている。
いつか血筋が絶えて仕事が終わったら、かさぎさんに想いを伝えようと思っている。