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約束
ここでまた会おうって約束したのは、十年前。
まだ小学校にも上がる前の幼かった私達には、それがとても難しいことだなんて知るよしも無かった。
一年後にはからかわれるのが恥ずかしくなって、人前ではあまり話をしなくなった。
三年後にはもうクラスも違って、人前でなくても話をしなくなった。
七年後には約束したことさえも忘れてしまっていた。
十年後の今では通う学校すら変わってしまって、顔すら思い出せなくなっていた。写真で見ても、こんな顔だったかなって思うくらいだ。
それでも十年経って約束のことを思い出したのは、きっと彼の方は約束をどこかで覚えていて……と思いたいけど、それは無理矢理なこじつけなんだろう。
けれど、一度思い出してしまえば、連鎖的に様々なことが甦ってくる。
「約束した場所は、ここじゃなくてあっちの方だよ」
そう言って境内を指差しながら、納骨されたばかりのお墓の前で、黒い服を着た私は少しだけ泣いた。
泣いたのはきっと、幼い恋心も思い出してしまったからなのだと思う。