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現実逃避ハーメルン
我がことのように喜んでくれた為、いたたまれなくなって逃げ出してしまった。
ところが、そうすると今度は「現実から逃げた」という現実が目の前に立ちふさがった。
そいつを振り切って逃げ出しても、また逃げ出してしまったという現実が追いかけて来る。
そこからまた逃げ、さらに逃げ……。
遂には私の後ろに種々雑多な現実がついて来るようになった。
中には私のものではないものまである始末。
こうなっては仕方なく、私は街を出ることに決めた。
笛を吹きながら。
結果として、その街から一切の現実は無くなり、現実味を失った街は地図上から消えてしまった。
私の後ろには未だ現実が追いかけて来る。
私は現実を振り返らぬよう、現実を見ぬよう、笛を吹くことだけに集中しようとしている。