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街灯
まあ何だ、正直言って困っていた。
「ちょっと! 居るんでしょ!」
大家が怒声を上げながらドアを連打している。
「こんなこと勝手にされちゃ困るんですけどね!」
困っているのはこっちだと言いそうになるのをぎりぎりで飲み込む。
「ドアの真ん前に街灯を立てるってのはどういうことですか!」
どういうことかと言われてもな。
目が覚めたら既にこんな状況だった。ドアの前に街灯が立ち、大家によるYoshik●級の高速連打が打ち鳴らされていたのだ。
だが問題はそこではなかったりする。
どうやら“それ”が聞こえているのは俺だけらしいということだ。
大家の怒声に混じって聞こえるもうひとつの声。
「先日助けていただいた街灯です。恩返しに来ました。ですからどうか開けて下さい」
……人に化けてから来いよ。
今「帰ってくれ」と言えば“聞こえてない”大家が勘違いして激昂しそうだ。
耳を塞ぎ頭を抱えながら、街灯が来て現状色々暗闇の中ってどういうことだよと思った。