何をもって「元」と言うのか
何も無い空間から女の子が落ちてきた。
下敷きになった結果、肺の中にあった空気を全部出されてしまい、一瞬死ぬかと思った。抗議してやろうかと頭を上げると、その女の子と目が合った。そして目が合うなりその子はこう叫んだのだ。
「お姉様!」
ええ?
そんな特殊技能を持った妹なんていないし、何より俺は男ですが?
「人違……」
「人違いじゃありません! お姉様、私、お姉様を助けに来たんです!」
「……」
反応に困っていると、その子は「今、西暦何年ですか?」と尋ねてきた。
「2014年だけど……」
「良かったぁ、間に合った」
何が間に合ったのか全くわからないが、理由を聞いても嫌な予感しかしない。そう思うが、女の子はその空気が読めないらしく、こっちを真っ直ぐ見て理由を告げた。
「お姉様は来年、2015年に性転換手術をしてお姉様になるんです! 私の大切なお姉様になるんです!」
……そんな要素はかけらも無いが。
「誰かが歴史を改竄したんです。でも私が来たからにはだいじょーぶ! きっと元に戻してみせますから!」
自信満々にそう言い放つ彼女を見ながら、それはそれでどうなんだろうかと微妙な気分になった。