吸血鬼!
「こんばんは。吸血鬼なので血を下さい」
どうしよう、不用意にドアを開けるんじゃなかった。可愛らしい声についついドアを開けてしまったけれど。
よし、閉めよう。
「新聞なら間に合ってます」
「ちょっ……!」
がっちりドアを掴まれた。
「新聞の勧誘ではなく吸血鬼です。すいませんが昨日から何も食べてないんです。だから血を下さい」
「意味がわかりません。帰れ」
「いや、ですから私は吸血鬼で……」
「壷なら買いません」
「変な宗教でもないですし壷も売りません。ただちょっと血を吸わせていただければ……」
くそう、何て力だ。これが昨日から何も食べてない女の腕力か? ドアがみしみし悲鳴をあげている。
「すいません、今持ち合わせが無いもので……」
「いやいや、血ってそういうものじゃありませんから。ちょっと首筋に歯を立てさせてもらえればすぐですから」
「血液型何型?」
「A型ですけど……?」
「悪いな、俺はB型なんだ。諦めて帰れ」
「輸血とは違うので大丈夫です」
……そんなやり取りを2時間ばかり続けた結果、最後は婚姻届を役所に提出することになりましたとさ。
血がどうとかどうなったかとかは知らん。