片山ソルジャー
片山さんはソルジャーなので、いつも戦いに明け暮れています。
「まあほら、あれな。見える? ああいうのんと戦うとるわけや」
そう言いながら片山さんが指差したもの。それは、デパートの屋上や遊園地にあるパンダなどの形をしてむいむいと動くあれでした。
人によっては、乗ったままデパートの屋内に入ろうとして係員に怒られたりしたこともあるだろうあれです。
「ああいうんもな、見た目の可愛さとは裏腹に結構狂暴なもんなんやで」
百円を入れ、上には乗らずに正面からぶつかり合う。
片山さんはそうして戦い続け、そして生き残ってきたのだそうです。
「仲間はみんなやられてしもたよ……」
そう言って片山さんは懐から写真を取り出しました。そこには、数人の男性が肩を組み、仲良さそうに笑う姿が写されていました。
「ほら、ここ。これが俺や。若いやろ? で、隣に写っとるこいつ。津波言うんやけどな。この津波が最初に死んだ。相手はくまさんやったなあ……」
その時の片山さんが見せた表情。そこには、ひとりの男の人生が滲んで見えました。
さて、行くか。
片山さんは、ひとしきり今は亡き戦友の思い出を語ると、僕から百円を借りてパンダへと向かいました。百円で3分。
片山さんはソルジャーなので、今日も戦い続けていることでしょう。