表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
128/132

世界一優しい、音楽の話

 その昔、シングル曲は3分半が好ましいなんて言われていた時代があった。


 今時見かけないカセットテープの僕は何度も何度も再生されたせいでテープが伸び、もうちゃんと鳴らないことも多いのだけれど、それでも彼女は今日も僕をケースから取り出してくれる。


 録音されているのはあの時代の、けれどもう廃盤になっているようなマイナーな曲。でも彼女にとってそれは世界一優しい音楽で、だから僕は今でもこうして再生してもらえるのだ。


 少しでもちゃんと鳴るようにと、彼女は丁寧に気をつけながらテープの余計な弛みをとっていく。

 やがて僕はデッキに入れられ、後は再生ボタンを押されるのを待つだけ。


 彼女が小さく祈る。


 ずっと、幼かった頃から、彼女が落ち込んだりした時にはこの曲が元気づけてきたのを僕は知っている。この曲が何度も彼女の涙を拭ってきたのも知っている。


 今日だって……いや、今日は何がなんでもちゃんと鳴らしてみせる。今日で千切れてしまったって構わない。

 だから、ほんの3分半だけ。彼女が今そうしているように、僕も何かに祈った。


 彼はこの曲のように優しい人だよ。


 彼女が再生ボタンを押す。

 僕の中でゆっくりとテープが回る。


 マリッジ・ブルーなんて吹っ飛ばしてやるから。


 そして、最初の一音が優しく鳴った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ