かみさまのじかん
俺は神様になった。
厳密には「神が宿った」だが。
だから全てわかってしまった。
瞬間、脳の全てが活動を開始し、世界はスローモーションとなり、そして全感覚が神様と同化し、感じとる。
もれなく全ての中出しセックスや、もれなく全ての着床の瞬間や、もれなく全ての出産の光景や、もれなく全ての生命の誕生や、もれなく全ての産声を。
それらは混じり合い、余りにも尊く美しく俺は自然と涙を流していた。
神様は常に、あらゆる意味で涙を流し続ける存在だった。
産まれ出でた総てに祝福を贈りたいと素直に思えた。
その為の数秒が短くも永く感じられる。
数秒。
そう、俺が神様でいられるのは数秒だけだ。
その時間もあと少しで終わってしまう。
神様は投身自殺者の滞空時間を渡り歩く。
こんなにも命を愛おしいと思えたというのに、もう俺の時間は5秒に満たない。
どんなにもっと生きたいと思えても、もう俺の時間は2秒に満たない。
それは自らを粗末に捨てようとする者に対する、神様による罰のシステムだった。
そして残り1秒に満たなくなって、俺は祝福を贈る最期の言葉を呟いた。
「ああ、愛おしいなあ」




