秘するが花と言うけれど
「……いい加減、そういうものを学校で堂々と読むのやめなさいよ」
「いいじゃないか。気にするような人がいるわけでもないんだから」
「私が気にするのよ!」
「ほらそんなこと言わずに。今回使えたのはこの人ので……」
「ちょっ……」
「次がこの人。あ、この新人はまだまだだなあ」
「……っ! もう! そんなもの見せないで!」
「なんだなんだ、もう。相変わらず真面目で純粋だなあ。可愛い奴め」
「……やめてよっ! 本当に……」
「今日はいつもよりキツいな。本当にどうしたって言うんだ?」
「……なんでもないわよ。とにかく早くしまいなさいよ」
……そんな昼間のやりとりを思い出しながら、PCを立ち上げる。
そこにひとつのテキストファイルを開く。書かれているものは所謂「官能小説」と呼ばれるもので、それは昼間彼女が「まだまだ全然」と言った新人の次回作だった。
それを全て消す。真っ白になった画面に彼女の面影が浮かぶ。
このことを彼女は知らない。知られるわけにもいかない。
女子大で男が居ないから気兼ねする必要無いと官能小説を堂々と読み、使える使えないと臆面も無く話すような彼女だけれど、それでも、彼女は私と“違う”から。
だから、せめて。
いつか私の言葉が彼女の指を借りて、その奥を侵してくれればいい。
秘するが花と言うけれど、真直ぐに咲かない私の花はあまりにも醜い。
「可愛い奴め」という言葉に指を奪われながら、「純粋」なんて言葉、私には似合わないと泣いた。




