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鏡よ鏡
鏡の私を愛し過ぎた私は、その日私に私の想いを告げた。
けれども、私は私のことなんて好きでも何でもなくて、君じゃ僕に不釣合いだよと鼻で笑って返す。
「せめて僕よりほんの少しでも、強い人間じゃないとねえ」
それ以来、私は私よりも強くなる為に色々なことをして様々なことを乗り越えてきた。
けれど私がどんなことをしても、私は「それなら僕も経験したよ」と余裕の顔をするのだ。
「僕は君のするどんなことだって経験しているよ」
僕より強くなるなんて不可能なのさ。私を馬鹿にするように笑う私の顔を見て、頭に血がのぼるのを感じた。
「あなたを嫌いになりそうだ」
鏡の私は薄く笑う。
「ほらね。やっぱり僕らは鏡だ。君が僕を嫌い始めた今、僕は反対に頑張ってきた君のことを好きになり始めている」
私が嫌い始めたからか、鏡の私が好きになり始めたからか、私達がいつ入れ替わったのかを知るのは、隔てた鏡だけ。




