赤色に誓う少年
今日も、隣の家では家族で騒いでいる音が聞こえる。
カイトは、彼にとって最早真っ赤にしか見えない月を眺めていた。
ただ、磨く。磨く。彼は、その時の為だけに爪を研ぎ機を狙っている。そう、《赤色》に誓った。
朝、階段をゆっくりと降りるカイトは、テーブルに座って紅茶を啜る男に声をかける。
「おはよう、叔父さん。」
「おお、おはようカイト。昨夜はぐっすり眠れたか。」
「ああ、もう大丈夫だよ。子供じゃないんだから。」
笑顔。その完璧な笑みが『作られた』笑みだと気づける者は、世界中探してもそうはいないだろう。
「おお!そうかそうか。それはよかった。」
今までの心配そうな顔を一変、豪快に笑う男。
男は叔父として、そして今では唯一の肉親として彼の笑顔に安堵した。
「うむ、カイトよ。お前も今日から学園だ。学園を卒業してしまえば、お前ももう一人前の男だと俺は思う。よって!子供として、今楽しめることを学園で精一杯楽しんでこい。俺に迷惑がかかるとか言って遠慮なんかすんじゃねえぞ?
子供は大人に迷惑かけてナンボなんだ。‥‥‥‥よし、行ってこい!」
喋りつつ席を立ち、カイトの元に行くとその背中をバンッと叩く。
カイトは、学園に通うに当たって寮に入る。
「はい、叔父さん。今までありがとうごさいました。
長期休暇には帰ってくると思いますが、取りあえずさようなら。」
そんなカイトのセリフが、カイトを我が子のように見てきた男にとってたまらないモノだった。