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「着いた」

「私、靴無いから。このまま中に入ってそこで下して」

 ほざくねぇ。こちらも最初からそのつもりだったが、口に出して言われると、逆らいたくなるねぇ。万歳をしたい。たまらなく万歳がしたい。何にもめでたくも嬉しくも無いが、たまらなく万歳したい。ここまで万歳をしたいんだ、しよう。

「きゃっ! ななな何すんのよ、痛いじゃないの!」

「悪い」

「……おケツが割れたわ」

「気のせいだ」

「今、精一杯のユーモアをぶち込んだのに、そのままさらりと中に入っていくのどうなのかな!」

 さーて、とっととメシの用意でもするか。


「やっぱり建物に不思議な点は無いようね。もしかしたら、別の部分で、と思っていたけど」

 しっかりケツ払って……こいつ、ちっさ。

「どういう意味だそれ。とっとと晩飯にするからな」

 ああ、そういえば飯を炊くの忘れていたな。しまった。仕方ない、漬物のみにしとくか。

「……これだけ? 大皿に漬物って」

「スマンな。ご飯を炊いていなかったのでな。ただな、味はいいぞ、あのババアの唯一の長所だからな」

「……塩加減もちょうどいい。たまには質素な食べ物でも悪くないわね。ふふっ、こんなものを……泣けてきちゃうわ。あいつらが居ればなあ……もっとマシなものを――」

「没収」

「ああーごめんなさい、持っていかないで。食べます、大人しく食べます。たくわん大好き」

 なんなんだこいつ。黙って食え。

「……あーありがとうねー。でもホントあいつら何処行っちゃったんだろ。うん、しょっぱい」

 あいつら。社長の黒服子分の事だな。ほぼあの三角のあれだな。

「ここから庭見えるだろ。後ろだ、後ろ。一部しか見えんが、勝手に組み立てられたテントがある。

残念ながらこの村にテントと言う、お前の大好きそうな高級でシックなバリアフリーな建築物はお前らしか持っとらんだろ?」

「ああ、あるね……。テント程バリアフリーに無縁な居住スペース無いだろうけど……あの、あるね。その……ごめんね。一応、聞いてみるけど、許可…………ああ~無いよね。勝手って言ってたもんねぇ。ちょっと行ってくるから、漬物、残しておいてね」

「おう」

 目に力入ってなかったな、社長。黒服どもが恐らく居るであろう黄色すぎるテント、向かう足取りがあ~何とも重そうに。

「あのさ、ココに来るまでは割と使える奴らだったんだよ! 前もって言っとくけど!」

 さいですか。わざわざ俺に言わんくても。なんだ、自分の名誉込みか。そりゃ、あんなの連れてたら仕事ならんよなぁ。行く先々でバッタ追う奴を更に追う羽目になれば、そっちの方が重労働だ。

「居た! お前ら! こんなとこ勝手に、何ぃ? もうおねむの時間? 待てコラ、まだ……8時じゃねえか。どんだけよい子してるんだよ。一人足りないけど……虫探し……ね。バッタか! やっぱアイツか! アイツとお前らはもっと眠らない現代っ子達を見習えよ。……お前ら、メシは、食った? 親指立てんじゃねえよ! バッチリ? 口パクも何かイラっとくる! なに、食べた? カレー……。キャンプか! 夏の自然学習か! くそッもーいいッ!」

 どうやら終わったらしい。そして、金属音。飯盒が飛んでいってる。社長、コミカルなポーズで跳ねているな。見るからに、飯盒をトーキックした後です、と言わんばかりだ。お、転んだ。また飯盒が飛んでいく……。あの辺は飯盒が転がっているんだな、明日洗濯物干す時気を付けるとするか。

 

「よお、ご帰還おめでとう社長」

「すいません、バンドエイドを下さい」

「いいえ、ありません」

「そうですか、ありがとうござ……ごめん、すり傷出来ちゃったから、せめて濡れタオルだけでも恵んで」

「あー擦れてるね。お前の社会での摩耗っぷりを彷彿とさせるくらい擦れてるね」

「見てないでさ、お願いよ」

 タオルか、洗い場でもいくか。まあ、ワタクシの解説っぷりにノーコメントも悪くないないですね。


「ほーれ、濡れタオル」

「ありがとう」

「そして、消毒液とガーゼ」

「……沁みるヤツ?」

「どうかなぁ? 沁みるかなぁ? 沁みないかなぁ? さーてぶちまけてみよう!」

「やめぇい! まだ周りの泥も拭えてないし、そこ置いといてよっ」

 ふざけ倒し、本当にぶちまけて大惨事を演出しても面白そうだが、黒服どもの様子がどうだったかも気になる。

「普通に置いてくれた……あ、自分でやるから」

「別にもうふざけねえよ。それよりどうだったよ、あいつら。知らん内に、俺の家の庭にテント張りやがって」

「ごめん。それは私が代わって謝る。明日には帰るつもりだから、それまで辛抱して。あいつら、もう寝てるし、どかせそうに無いし」

 その辺の野っぱらでいいだろうに。バッタか、珍しいモンでもいたのか。

「ねえアンタ、この村に長いの?」

 ……長い? 村、長い。狭いのは認めるが、長くない。

「あー、産まれた時からこの村に住んでるのって事」

「なんだ、そういう事か。そうだな、どうだろう。まあでも、一番新参なのは俺だな。旅して、結局最終的にココに落ち着いたってな感じだしな。村の事聞きたいなら村長が一番だ」

「その村長なんだけど……何者?」

 なにもの……。

「俺も知らん」

「えー。あんな親しそうだったのに? 知らない? なんでよ」

「村長は村長だ。それだけの認識でしかないな、俺にとっては」

 確かに、なんだと言われて、それ説明できるかって出来ん。考えた事も無かった。別に知らなかろうと、住んでて損傷まるで無しだからな。


「おーい、居るか!? 晩飯まだだろうと思って、肉じゃが持って来たぞー。返事しろー」

「あ、噂をすれば」

 このタイミングでやってくるか。ババア。










 










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