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あれからちょっとした騒ぎになったな。その成り行きを箇条書きでまとめてみるか。
社長、泡吹いて倒れる。
担いで、布団の上に社長を寝かす。
村長が死者現世回帰の儀を執り行う。
儀式終了後、一時間ほど談笑。
社長、目が覚める。そして、ここが現時点の状況。ざっとこんなもんか。
「……あ」
「社長、起きたか。急に倒れて、けっこうビックリしたぞ。もうちょい長生きできる生き方しんと」
「今、何時……?」
「あ~ここ時計無いな。ま~夕方ってところだな」
茫然としてんなあ、社長。布団で寝そべるがまま、じっと天井を見つめて。
「夢……見た……」
「ほう、なんだ。あれか。天井から自分が倒れていくさまを見ていたとかか。幽体離脱か」
「ううん……。宇宙人……」
「宇宙人?」
「うん。光に包まれた部屋でね、私の体を改造されていくの。あと、変な歌も聞こえてきた」
変な歌は、儀式で村長が唱えてたヤツだな。でもなあ、流石に死んだから蘇えらせたとは言えんし、幻聴ということで。そのような方向で。黙っとこう。
「今なら私、スターマップ書ける……」
バカ、起きようとすんな、大人しく寝てろって。だから起きるな、こいつ抑えてもきかんな。釘でも打っとくか。
「書かなくていいからな。夢だ。夢。想像力豊かなのはいい事だが、そりゃ現実ってもんをきちんと認知しているのが前提だ。それ出来んと極め付きのアホだぞ」
「うん。夢。そうね、夢だわ。納得した。じゃあ私、改造されて、得体の知れない金属やらコンピューターチップやら埋め込まれたりしてないのね」
「してない。間違いなくしてない、そんなことしても宇宙人には一銭の得もなさそうだしな」
「……わからないわよ? 私を、サンプルに値する生物と見なされたら?」
「ないな~」
「あはは、いやぁ、結構調べがいがあると思うけど。世界各地に足運んだりしてるし。今、まだここ村なのよね? 本当ならもう、許可もらって、本社戻って、資料まとめて、誰派遣するか責任者決めるかやってるとこだから」
「まー、大変。仕事、考えるな。寝ろ」
「ふう……。そうね。村の存在を知って急いできたから、目まぐるしさ半端なかったもの。ちょっと、休ませてもらうわ。あんな夢を見るなんて、ホントどうかしてるんだわ。医者に診てもらおう」
「どうだ、調子わ」「帰ッタぞ~!」
村長と鍛冶屋の親父が台所から帰還か。メシか。
「親父、すぐそこじゃんよ」
「アッハッハ、ノリじャ、ノリ」
どのノリだ。ご飯にでも巻くのか。
「ほー、社長さんよ。気分はどうだい」
で、気分はどうかと聞かれているにもかかわらず、俺の袖を引っ張るとはどうかな、社長。
「まだ、夢、続いてんじゃん」
……デコピンをしてやろう。正気に戻れ。
「イタッ。あれ、ウソ、宇宙人いるよ。銀色だよ。光沢すごいよ。でも痛いよ」
「あのな、人の肌の色や特徴で差別をするな。世の中、銀色の人間もいる」
「……そぅ。ナラッテナイナア……ハジメテシッタナア……」
「お前がどれだけ知識持ってるか知らんが、たかが知れてるだろうよ。確かに俺らとは違うが、まぎれもなく、親父は、人だ」
「そう、そうよね。うん、そうよね。だよね。私が知らなかった。そう。そっか」
「がッハッハ、オ嬢チャンハワシノ肌ノ色見テ、仰天シタノカ。ココマで、ピッカリシテルノモワシクライだカラナ!」
「とうちゃんすげえや」
「太郎、オ前モ父チャンノヨウニ、ピッカリシロ!」
「うん、がんばるっ!」
文字通り、磨けば光るってか。
「……生まれつき、なんですか?」
「ンアッ!? アッタリメエじャネエカ!」
「あ、ああ……。何故だろう、世紀の大発見に遭遇しているのに、私、不思議と落ち着いてる。後で、色々、個人的にお話でも」
「オウ! イツデモイイゼ! 聞キテエ事アレば何でモ言ッテクレィ!」
「社長さんや、どうするかい? 今日はココに泊まるかい?」
「あ……えっと……」
で、何故俺を見る。
「一番、まともそうだから」
「何にも言ってないけどな、泊めるとも……そんな目をするな、意味不明な罪悪感がぐつぐつ沸いてくる。しゃあない、今日だけな。一日だけだ」
捨てられた仔犬と同じ目をしやがって。
結局、俺の家に泊める羽目に、か。しかも背負わされ。ウンコ踏んだし。ここまで道暗くちゃ、足元危ういわ、てもう事は過ぎたか。踏んじまったし。
「村の人、まだいるのよね……他もその……奇抜?」
奇抜? 奇抜か!
「ははは! 奇抜かあ!」
「なによ、奇抜じゃないの。世界のびっくり人間大集合でもお目に掛かれない人ばっかりじゃない」
「いやぁそうだな。確かに、ウチの村とテレビとは世界違う感じしてたな。パッとしないのしか映ってないよな」
「もし私に世界遺産登録の権限があったなら、即決だわ。この村」
「ははは! アンタ意外と面白い人だな!」
「ふふっ、なんか緊張とか責任とかどっか吹っ切れちゃって」
「村、改造すんだろ? 頑張れよ」
「え。う、うーん……明日にしよう、その話。着いたら村の話してよ。そっちの方が私としては気になる」
「あ? 別いいぞ。まー、大して何も無いけどなー」
「いや、めっちゃあると思うけど……。ほら! 私、何も知らないからさ。知らない国、と言うか世界と言うか、の、言語とか出たら話支障出るしさ」
「ははっ、流石に同じ村居てそれは有り得んだろ。常識的に考えろって」
「あ、あー……うん。そだね。」




