勘違いは チャンス
「はあ… やっぱり格好良かったなあ。」
アタシは、彼氏さまのソファでゴロゴロ体制をとりながら、ニヤニヤと笑っていた
何をしてたんだって?
アノデスネ、ちょっと昔のアクション映画見てたの。
彼氏さまは休日出勤って聞いていたから、合い鍵渡されて「俺んちで、待ってて」って。で、彼氏さま待ちついでに、映画見てたの。
ヒーロー格好良かったなあ
アクションも良かったけど、素直じゃない二人の恋愛シーンも良かった。
チョイ俺様のヒーローとツンデレのお姫様が、言い合い続きだったのが、トラブルがキッカケで惹かれ合って… はあ。二人が素直になる瞬間のシーンが最高。
あー このまま余韻に浸ってたーい!
どうやら、そのまま ヘラヘラニヤニヤしながら寝てしまったらしい。
「起きろ」
ん?んん?
「寝るならベッドの方がいい」
あれ、あれれ?
気がつけば、天井には電気が。視界の端には、真っ暗な空が。
「あれ?夜?」
そして目の前には彼氏さま。
「あーお帰り」
やばー 夕飯も何も準備してないよ~
「あー。じゃねえよ」
彼氏さまは、ネクタイを緩めながら、溜め息をついていた。デスヨネ。
「ごめん、寝ちゃった」
謝るものの、脳裏にはバッチリさっきの余韻が漂ってるけど…
「お帰り」
さて、彼氏さまが帰ってきたのなら、現実世界にご帰還しないとな。夕飯、買い出しすらしてない。…付き合ってくれるかな?
起きあがろうとした時だった。
「(んっ)!!」
肩を押さえつけられて、そして覆い被さられるようにキスされていた。
な、何で急にスイッチ入るわけ?
視界が塞がった中、耳が拾った音は、時計のバックルが外されて、テーブルに置かれた軽い金属音。
包容とキスが激しくなって…これはもしや、いきなりスタートですか?
彼氏さまがご帰宅後に選んだチョイスは、「ごはん」でもなく「お風呂」でもなくってのは、恋人冥利には尽きるけど、ちょっと急すぎた彼氏さまの緊急異変。
さては、今日の休日出勤でなんかあったか?…疑ってみたけど、むしろ 自然なくらい優しい。むしろ、ごはん作ってない割には、サービスいいし。
なんだ?なんだ?
答えは、全部終わって二人で微睡んでいた時に分かった。
「ずっと、ウチに来てから ソファにいたのか?」
顔を見なくても、触れる指とか声で彼氏さまが、かなり機嫌がいいのが分かる。
「うん。帰り、思いの外遅いなーって思いながら」
このとき、アタシは「DVD、見てたよ」とは たまたま言わなかった。それは、気だるくて、ただなんとなく幸せで あまり喋りたくなかっただけなんだけど。
「…かわいい奴」
ん?
「そんなに、会いたかったか。」
あれ?なんだ?この「俺がそれだけ好きなんだろ?」的思考展開。
あー そういうことか。
アナタは、アタシのニヤニヤとしたままの寝相を 都合良く受け取ったらしい。
違うんだけどなあ。でも、嬉しい誤算ではあるんだよなあ… 「好き」って最近伝えてないし。
よし、このままにしよう!そういう事にしてしまえ!!
あの寝相を気色悪いと思わなかったのは、この男の愛情だろう。
このチャンスを生かして本当に伝えよう。
「お帰り。」
自分からスリスリして抱きついた。
返事はない。そのかわり、少しだけ扱くて長いキスが帰ってきた。
ふとした勘違いだったけど、こういうときに互いの本音って分かるんだと思う。そういうときにこそ、伝えた方がいいと思う。
「(だいすき)」
キスを受けながら、体重をもっと預けながら、ふとそんなことを思った…
なお、アタシが 急いで彼氏さまをお風呂へ押し込み、手際よくDVDを片付けたのは言うまでもない…




