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オンナはそれを似合うと言って欲しい

休みの日の昼下がり。

彼氏殿リュウイチの家で、のんびりと遅い昼ご飯を食べ終わった後のことだった。


「リュウイチ、今度は何みてんの?」

ウチの彼氏殿リュウイチは、ネット通販が大好き。パソコン立ち上げたときは、仕事かネット通販かのどっちか。

 今だって。アタシが皿を洗い上げて戻ってきた今の今までパソコンやってた。

 

…お皿、洗い終わっちゃった。

仕事じゃないなら、二人で皿洗いとか…したかったな、とかついつい言いたくなっちゃうアタシの女心ですたい。




 リュウイチが「終わった」と、マウスから手を離した。おもむろに「シャワー浴びてくる」と立ち上がる。

「ネット、使いたいならいいぞ」

 電源を落とさないまま、リュウイチは立ち上がった。

「特に買いたい物とかないんだよなあ…」

そう自然にくちをついてしまうんだけど、指先は既に興味津々。


 最近ね、リュウイチの家に置きっぱなしに出来る部屋着ルームウェアが欲しいの。

 着る物はいっぱいあるんだけどね、やっぱり彼氏殿の前ではヘンなのは着れないじゃない? その辺は、まだ女子で有りたいのです…


 サイトをパラパラみてると、これは!というのに行き当たった。そこには、季節ごとの部屋着の写真が散りばめられていて

 スポーティーなものから、若干のぶりぶりレース付きなものまで色んな着こなしが載っていた。


…ぶりぶりレースのオマケ付きは、チョット勘弁だけど…


このモコモコ素材の上下スエットセットとか、熱帯アジア圏の寺院か本場のヨガウェアみたいなエスニック系とかは、フツーに着てみたいな。


いい加減、もう三十路だしさ。

子供っぽいのはイヤだし、

かといって、安っぽい上下トレパンもイヤ

どうせ着るなら、シャレっ気があるモノ着たいな…


そんなことを思いながら、画面をスクールしていくと。


おっ!と思う一方で…指が止まる服がでてきた。

それは、女子だったら、いや 洒落っ気が出てきたら一度は経験する悩み。


あのね、見た瞬間おっ!と思ったの。

うわっ可愛い。これは、可愛い!! って


でも…

似合う自信がない…


アタシ自身と服が、かなりのアンマッチ。


突然どうしたの? イメチェン?って思われちゃいそうなチョイスになりそう。


 今更…似合うのかな、こんなアタシが。

仕事はガテンで、甘い可愛らしさもないサバけたアタシが。

はたして こんな可愛いカッコして…浮かないかしら?


その一方で、悩む気持ちもある

いつ着るの? 今でしょ。

そんな、一頃流行ったフレーズがアタマを過ぎていった。




リュウイチがシャワーから帰ってきた。

「どうした?」

そのまま同じ画面を見て言う。

「買うのか?」

着てみたい、かも。でも、やっぱり思う

「アタシのガラでもない。」

よぎる二つの本音のなかでも、悩みごとの方を呟いた。


 恋人を前にしたら、誰しも考えると思う

んだー?


 少しでも、「可愛い」「綺麗だ」とおもってほしい。そのまま振り向き続けて欲しい。ずっと…好きでいてほしい。


でもそれは、服だけ着ても 似合ってなければ評価には繋がらないワケで。


「着たいなら着ればいい。」

いやあの。聞きたいのは、「似合うのか」「似合わないのか」その結論でしてね?


リュウイチがマグカップへミネラルウォーターを注ぎながら言う

「…お前のガラってなんだよ?」

この手の会話になると、リュウイチは妙に鋭くなる。

「だって、三十路に両脚ツッコんだこの歳でますます似合わないわよ」

「三十路って中身と顔かよ」

リュウイチは、ククっと笑ってまたモニターをみる。


…ちみ、そーいうこと、言っちゃう? 気にしてるのに、ハッキリ言わないでよ…


「そりゃ…アタシは、童顔で…まな板少年体型ですけどね?」

「髪の毛伸ばして、ようやくオンナに見せてるってか?」

あーもー サラリと先回りして言わないで!どーせ、そーですよーだ。



あーあ。

こうやってはぐらかされて、からかわれてるってことは、似合わないってことかなあ?


リュウイチは、アタシがみていたサイトを眺めながら言う。

「 オンナみたいな恰好をしていれば、その内、脳も感化されて、似合うと思い込めるようになる。 」

…オンナみたいな恰好って…アタシ、性別は元からオンナなんですけど。

一瞬、ムッとした間もなく不意にリュウイチが動いた。

「買ってやるよ」

マウスにかぶせたアタシの指に触れ、そのまま購入手続きまで進んでいる。


えっ、ホントに買っちゃうの?

マジで? 


ところで アンタどさくさに お揃いのブラとショーツも購入したでしょ? 何で迷わずサイズを入力出来るのよ?


「珍しく似合うのを選んだな」


え?

突然の一言に驚いて、リュウイチを見やった。でも、なにも答えないリュウイチ。


いや、ちょっと待ってよ、無言、決め込まないでよ!

アタシ、ぽつりと聞こえたわよ一番欲しかった感想を。


着日指定を入力してる横顔を、じーっと見つめ続けていたら、観念したようにリュウイチが言葉を続けた。


「着たら似合うだろうな、と思うことは 時々ある。…でも、趣味じゃないんだろ?無理にとは、望んでない」


望んでないって… そうはいっても。

着て見せて欲しいとは思ってる。

実は、こっそり


そっか、そうなんだ。

とっても控えめだけど、とっても尊重してくれてる貴方の本音


じゃあ、やっぱり 着てみようかな

そーいう服も。

貴方が、似合うと口に出してくれるなら。

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