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そしてまた 好きになる

それは、土曜日の昼下がりのこと。

昨日は、リュウイチの家につくなり 飲んで食べて、仲良くなって 眠りこんで。

起きたときには、太陽は ずいぶん前に 高く上がっていた


まだ眠たいベッドの隣、

「La La La La La… La La La La La 」

そばで 歌が聞こえる


…歌? 生歌?

体を少しだけ動かして まさかね? と 見渡すと隣でリュウイチが 起き抜けの残り香も抜けた姿で 起き上がっていた。

手には、私のmp3プレイヤー。この家に来る途中まで 聞いていたもの。

延びたイヤホンが、両耳に填められて、時折 細いコードが揺れている

歌詞に合わせて、首が僅かに振れているのは…リュウイチ 無意識なのかしらん?


あらまあ。

リュウイチの鼻唄交じりの姿って 初めてみた。これって かなり 貴重、かも?

…いつも ややこしい顔ばっかりのリュウイチも 音楽聞きながら、歌ったりするんだ?


なーんかさ?

リュウイチって 仕事柄、重役秘書だからさ。会社の超エラい人とかと 行動を共にしている分、愛読書は ビジネス関連だったりする。

だから 普段は、ファッション誌とか タウン誌読むより 日経ビジネスとか ダイヤモンドとか の経済誌を読んでいそうだし

オリコン上位のアーティストユニットに詳しかったり カラオケ行ったりとか言うイメージ、ぜんぜん 無い。

それだけに 結構 意外。


しばらく眺めていると 流行歌聞きながら、歌ってる姿は やっぱり 疑いようもない事実で。



まあ、そうだよね

洗いざらしの髪で 家のソファーベッドに 寝転びながら 二度寝を楽しんでる姿見ちゃうと、さ

リュウイチは、本来は フツーにいる 30代の男であって、休みの日は カノジョ(つまりは アタシだけど。)と過ごすし、ギリギリまで ベッドでゴロゴロもするだろう。


改めて 思っちゃうよね

会社での姿は ほんの違う一面でしか無いんだな…

ついつい 忘れちゃうけどね。




ところで。

いま、何聴いているんだろ?

鼻唄だけ聞くと、半年前とかに ヒットした…ラブソングっぽいけど、な


でも 今、声をかけたら きっと 歌うのを 止めちゃうよね


貴重な リュウイチの鼻唄姿は もうしばらく眺めていたかったから。

楽しそうにしている リュウイチの姿は 私も嬉しいから。

このまま、もう少し…




「…起きたのか?」

リュウイチが こちらを向いたのは ほんの一分も掛からない後だった

あっ、歌うの、止めないで…

思わず リュウイチが プレイヤーのイヤホンを外す前に、えいやっ! ちょっと 思い切った行動に出てみた。


「おい、なんだ… おい」

戸惑うリュウイチは、この際無視。腕の中に 入り込んで キスして驚かせた後は、膝にあがりこんで 股を枕にして寝転んでみた。膝枕ってやつ。


「いいじゃん? これくらい」

ニヤッと確信犯的に 笑って 強引に居座ると、リュウイチのイヤホンを外そうとする手は、「何をやるかと思えば…」私を触れる手に変わってくれた。

苦笑いは 続いてるけど、寝起きのアタマを撫でる 優しい手は 変わらない


「なんか 嬉しい」

ついつい、笑いたくなる

「なにが?」

リュウイチの意外な姿見れて 。

「なんとなく、ね」

寝転びながら、手のひらの感覚を楽しみんで、いい気分のまま、また 目を瞑った


手のひらの感覚がいい

指先が髪を掻き分けるリズムがいい

時折 膝から伝わってくる鼓動がいい


幸せ過ぎて 眠くなる

なのに、嬉しすぎて じっと出来ない。

自分でも ドキドキ分からなくなってる…レンアイ系ゼイタクな戸惑い。

なんか 遠足前の子どもみたい。

嬉しくてワクワクしちゃう


アタシ、こんな キャラじゃなかったのにね

男の人の膝の上で 無邪気に 甘える日がくるなんて 思わなかった

不意打ちに 驚かせて そのまま 足許に上がり込むなんて、絶対 出来なかった。


気持ちも 身体も、リュウイチに 全部許してるから 出来る芸当。

頼むから、今までのオトコに 全部してきたとか 思わないでね?

…貴方だから、好きで 尊敬してて、憎たらしいところも 許してるから 私もさらけだせてる。


とっても、とっても 無邪気な アタシの気持ち。




そのままの無邪気な気持ちでねだってみた

「ねえ、また 歌って…?」

「嫌だ。」

「ひど~い! 即答なんだあ?」

ぶーたれてみたら 敢えては嫌だ、と 困った声が聞こえて。

「気が向いたら、な」

ぽんぽん、と 叩かれた

…起きろ、って事?顔を上げると いつもの仏頂面が 口を開く


「毛布、掛け直すだけだ」

そう言われて、リュウイチの腕が 視界を横切っていく。言われるままに眺めていたら…掛け直すというには、毛布を頭から すっぽり包まれてしまい。


…暑いってば 暑い。


しばらくたつと、もう 息苦しくなってきた。 せめて、空気の出入り口は 確保させてて… 訴えようとしたら、ふと 聞こえてきた声。


「Nnnnnn~♪ La,la la la~♪」


僅かに聞こえる リュウイチの鼻唄。曲は、わからないけど 、いいの…思いがけず又聞けた ささやさな 子守唄


『…Everyday say,I love you,

La ,la la la~♪』


毛布越しに聞こえる、貴方のラブソング

ありがとうね、ワガママきいて 甘えさせてくれて。


会社じゃ、厳しくて 難しくて ややこしい奴だけど 本当は、シャイながら優しい男。

こういう事されると、もっと 貴方が好きになっちゃう。


本当に、『毎日言うよ、君を愛してるって』

言ってくれたら嬉しいけど、貴方のことだから それはナイわよね…?


でもいい。

貴方が ラブソングを聴かせてくれただけで、嬉しい。とっても


シャイで無器用な貴方の I love you

言ってくれたら、私もきっと応えるわ

I love you too, って。


貴方は、シャイだから いつになるか、分かんないけど。



そんな幸せな気分でまた眠る 土曜日の昼下り。

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