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言わぬなら、言わせてみしょうぞ、「好きです」と

男の人と付き合いたての頃って 何かと不安になるよね

「この人、ホントにアタシの事が好きなのかな」って


付き合ってるのに、

三十路なのに、

男なのに、

彼女相手に 「好きだ」の一言も言えないってのは どういう了見なのよ?


ウチの彼氏は、秘書課のチーフ

役職に任せた横暴三昧の重役の御守りと、コネ入社の塊みたいな世間知らずガールズ社員の面倒が 目下のお仕事らしい


聞く限り 随分 面倒な秘書課さんご一行だけど、ウチの相棒も 相当面倒な男よ

毒を以て毒を制す、その狙いは 大当たりね


チーフに引っ張ったのは、確かに ナイスチョイスだわ、とにかく 仕事は出来るけど キャラ的に面倒くさい!!

とにかく無愛想で、目上目線で、怖い顔ばっかりで。

アタマがいいから 何かあれば 言い負かしてくるし、上背がある事に加え 憎たらしい程 顔含めて身体中のパーツが整ってるから いるだけで 気圧される。


俗にいう『俺様』って生き物


でもね、アタシ、負けないわよ?

誰が 黙って ホイホイ言うこと聞くかってのっ!

だいたいさあ

好きな女の人捕まえて 「好きだ 愛してる」すら言えないんじゃ ただのダメ男じゃないの?って思う

不器用、口下手は 論外! 認めませんからっ!! ベッドでも主導権とりようが、背中と言葉で 人を掴めないんじゃ、ツンデレ小僧でしょっ!


はあ

どーしようもないガキだわ

ちなみに 今現在 ツン七割 デレ一割 常人ヅラ 残り って感じ?


さーてさて。

やっぱり、女子たるもの「好き」は、ハッキリ聞いておきたいわよね。

どーすっかな



待ち遠しい、やっときた土日。

今日は、奴の家でのお部屋デート

職場の人に貰った 珍しいお茶を飲みながら ゴハンを食べた


季節の野菜に 奴の好物、エビを混ぜてのパスタ

アクセントは、自家製のオリーブ。浸けるだけなら 意外に簡単なのよ?

お腹いっぱいな上に、色々 しゃべり疲れて。

白ワインを 二人で空けて、いい気分。


ふとひとつ、思い付いたことがあって。試してみようと思い立った


「ねえ、今 どういう気持ち?」

きもちよく 力が抜けた肢体。部屋に入る風が気持ちいいけど 人肌も恋しい

「どうした?」

「いや…」

クスっと笑いたくなる。 こんなアタシだけど、お姿麗しいイイ男の暖かい腕を独り占めして 何も考えずに 身体を預けられる

「嬉しいな、って思って」

思ったままを 言って 「それが同じだったら、嬉しいと思ったの」顔を見つめた

そこからも奴をずっと見つめて数秒

奴の整った顔が ゆるゆると崩れた


「好きだよ」


ニヤリ。言わせたぜ

実はなにかと思いこんでた割には、案外 簡単に落ちたわね

私から立ち上る甘い空気は一瞬で消え、毛色の違う気配に変わったのは 言うまでもない


それを受けて、まるで 失言したかのような消沈した声が上から降ってきた

「何か…言わされた気がする」

顔を隠して ため息をついているけど念願叶った私は上機嫌

「男の子でしょ? それぐらい スッパリ言いなさいよ」

してやったり、出し抜いてやったり、ウヒヒヒヒヒ


「お前、ホント 怖い女だな…!!」

おっと、ベッドで仕返しとかは無しよ?

「心配しなくても 漬け込んだりしないわ」

宥めるように優しく伝える

「ただ、一度くらい自然な会話の流れで聞いてみたかったの。それだけよ」

ごめんね、と抱きついた

お気に入りの羽布団に 抱きつくみたいに。



まあその後は お約束のように イジメられたんだけど。

え? 何想像したの?

いやだなあ、そっちのイジメもあったけど、別な仕返しがあったのよ



せっかく干した布団が 台無しに乱れたベッド

昼寝というには いささか 信じて頂けない程 寝相が悪すぎる状況の中で。

「目が覚めたか?」

甘ったるい顔で 顔を覗きこまれた

「そうだね、でも もうちょっと 寝たいかも」

とても事務職には見えない がっちりとした腕を 抱き枕にして一眠りしようとすると 髪を撫でられはじめて ウトウトに拍車がかけられる


うんうん、そのまま続けてくれたまえ

非常に満足だぞよ

…と思った途端 ヨシヨシ が消えた


「むー!」と抗議したら ニマっと言い返された

「好きだ、愛してるって しっかり言えたらな?」


そのあと。

奴の高笑いが 夕日よりも眩しく響き渡った


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